FN115号
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1616no.115 Dec. 2023 春すのはら原敏明さん(73)が、預けたおもちゃを受け取りに戻ってきたかたと楽しそうに世間話をしていた。そのようすを見て、おもちゃの修理をしていた一人のかたがぼそっと言った。「すごいよね。僕にはあんなの(会話を広げることは)できないよ」。ボランティアには、機械に詳しい人だけが参加しているわけではない。電子機器のプロもいれば、コミュニケーションのプロもいる。ここにいる全員が、「得意」と「好き」を発揮して活動していた。***これまで私は、一人でできることが一人前だと思っていた。しかし、おもちゃ病院に参加する人を見ていると、誰かがいるからできることの大切さに気づけた。「電気のことは〇〇さんに任せるのが一番だよ」「○○さん、これってどうやるんだっけ」。誰かがいなければぶつかった壁を乗り越えられないかもしれないし、直ったときの喜びを共有できない。一人ではできないことでも、みんなでやるから楽しいと思えると、頑張りたいという気持ちが強くなる。それぞれが得意なことや好きなことを活かしながら、ときには足りないものを補い合うために、人は集まり、語り合うのだろう。都留のおもちゃ病院には、おもちゃに元気になってほしいという子どもの想いを仲間とともにつなぐ人たちの姿があった。原口桜子(学校教育学科2年)=文・写真①話し合いながらおもちゃを修理するようす(2023年9月16日)②思い入れのあるおもちゃを修理してもらった。動き出したときの驚きと喜びは忘れられない(2023年9月16日)③修理が終わったあとのおもちゃのようすを写真だけでなく、動画も撮って記録する(2023年7月15日)①③いた。ほかのグループの人が持っていたドライバーがぴったり合った瞬間、歓声が上がる。そのようすを見ていた高部さんは、「一人じゃ直せないですからね。みんなでああでもない、こうでもないと言い合って、直ったときにやりがいを感じます」とおっしゃった。たしかに、修理が行き詰まったときにその人のところへ自然と人が集まって声をかけ合うようすは、一人の活動では見られない。「おもちゃ病院ムササビ」では、異なる経験を積んだ人たちが集まって協力している。もともと電気屋で働いていた人もいれば、自動車屋で働いていた人もいる。ボランティアでおもちゃを修理してもらったことをきっかけに入ったというかたもいた。②

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