FN115号
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18no.115 Dec. 2023 屋台を使ってお囃子の練習をするようす。八朔祭を間近に控え、練習に熱が入る(2023年8月28日)子どもたちが、かけ声を発しながら叩く太鼓の音はとても力強い。元気なエネルギーがあふれ出ている。三味線の響きも耳に残る。太鼓の力強さを引き立てるような洗練された音だ。1年ぶりということもあってか、少し手つきがおぼつかないようすの子どももいた。指導役の男性が笑いながら「もっと元気よくできるんじゃないか」と子どもたちを励ますと、子どもたちは「これでどうだ」とばかりにかけ声と太鼓の音を強める。「やればできるじゃんか」と男性は満足そうにまた笑う。子どもたちも褒められて得意げな顔になり、いっそう力をいれる。そのようすが愛らしく、私も笑ってしまう。お囃子を聞いているうちに、あっという間に1時間の練習時間が過ぎてしまった。練習が終わっても、しばらく大人たちの談笑が続く。子どもたちは、そのあいだ公園で駆け回っていた。お囃子の練習は、子どもたちに夏の思い出を与えるとともに、大人たちのコミュニケーションの場にもなっているようだ。欠かせない修繕八朔祭当日が近づく8月下旬、ふたたび練習の見学へ行ってみると、屋台が運び込まれていた。じっさいに屋台に乗ってお囃子を練習するのだそう。屋台の提灯の灯りがつくと、あたりはやさしい光に包まれる。正面上部の鳳ほうおう凰など、丁寧につくりこまれた装飾に目がいく。だが、なにより屋台本体の堂々としたすがたに圧倒された。屋台自体の大きさもあるが、やはり八朔祭のシンボルとしての大きな存在感がある。大きくて立派な屋台は、簡単にはびくともしないように見える。しかし、屋台保存会会長の外とがわ川英ひでとし敏さん(71)は「修繕は怠れない」と語る。「今使っている屋台はね、2年前くらいに修理したんだよ。提灯や太鼓なんかも新調してね。屋台も太鼓も生きものだからね」。屋台の維持について教えてくれる外川さんの目は真剣だ。「楽しい祭り」のうらで屋台維持のために苦労をされているようすがうかがえる。屋台の修繕には多くの時間やお金がかかっている。外川さんたち早馬町のみなさんがさまざまな努力をして維持していることを思うと、より屋台に親しみが湧く。時代の変化とともに八朔祭は盛り上がりを見せるいっぽうで、年々若者の参加が減ってきているそうだ。外川さんは「うち(八朔祭)はお年寄りから子どもまで地域一体でやっている。田舎のいいところだよね。お祭りを通して子どもたちが地域を知る。でもやっぱり最近は若い人が減っている。お祭りはみんなでやるものだからぜひ来てほしい」と語る。例年、本学の留学生が八朔祭に参加して屋台を引っ張っているが、早馬町は他の町と比

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