FN115号
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25右:木に巻きついているフジのツル。まるでヘビのようだ(2023年10月10日)と思いきや、よく見ると、そのツルにはたくさんのトゲがある。トゲを使うことで、からだをより強く固定できるのだろう。毛にも見える細かいトゲを指でそっと触ってみると、なかなかに痛い。知らずにカナムグラの近くを通ったら、服の袖を引っかけてしまうかもしれない。カナムグラの葉を見てみると、ふちにギザギザの切れこみがぐるりと入っている。心なしか、ギザギザの葉にも近寄りがたい印象をいだいてしまう。ツル植物が伸びていくための方法には種類がある。同じ植物なのに、どうしてこんなに違いがあるのだろう。それぞれの細かくて見事な工夫に目をみはった。見上げてみるとうら山で、ツタウルシというツル植物を見つけた。立ち並ぶスギの木の幹に張りついている。色や質感までがスギの幹に同化していて、ほとんど目立たない。気がつかずに、そのまま通り過ぎてしまいそうだ。近づいて見てみると、太いツルから細い根を無数に伸ばすことで、スギの幹にからだをがっちりと固定している。真横から見ると、ツルと幹のあいだはわずかな隙間伸びるための工夫数あるツル植物のなかでも、フジを知っている人は多いかもしれない。春になると、薄紫色の花をいっせいに咲かせる植物だ。都留の新緑の山のところどころに見える紫色には、心が浮き立つ。うら山に入ると、木に巻きついたフジのツルがよく観察できる。途中でねじれているものや、周囲の木と同じぐらい太いものも見つかる。ある木の幹には、かつてフジが巻きついていた跡がくっきりと残っていた。ぎりぎりとしめつけられていたようだ。線状の深い溝がついた幹は、どこか痛々しい。藤棚のように管理されていないフジのツルは、生命力にあふれていた。しかし、ツル植物は必ずしも巻きついて伸びるものとは限らない。たとえば、ツタという植物は、吸盤をつかって電柱や柵を這いのぼる。ツルから吸盤をいくつも伸ばし、張りつきながら生長していくのだ。柵を這うツルをつまんで引っ張ってみても、簡単にはがれないほど強く張りついている。いっぽう、カナムグラは別の方法で伸びていく。緑色の葉を茂らせて柵に絡んでいるだけか左上:ツタが枯れたあとも吸盤が電柱に残っている(2023年11月4日)左下:紅葉したツタウルシの葉。手に取ってみたくなるが、かぶれることがある(2023年10月16日)
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