FN115号
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3636no.115 Dec. 2023 キホウキタケだと思われるキノコ。森のなかでひときわ輝きを放っている(2023年10月3日)しゃるには、このキノコは、毎年この森のこの斜面でのみ見つけられるという。私たちの住まいの条件がそれぞれ異なるように、キノコも種類ごとに生息条件が異なる。日当たりのよい斜面に生えるキノコもあれば、じめじめとした日陰を好んでコケのそばに生えるキノコもある。それぞれが自分たちにとってよい条件の場所を選んで生息している。キノコを見つけたら、周辺を見わたし、どのような条件があってここに生えているのか、考えてみると想像が広がる。山はすがたを変える10月になり、雲ひとつない晴天に誘われるようにして、観察に行く。今日はどんなキノコと出会えるのだろうか。期待しながら、うら山への入り口がある「うぐいすホール」の近くまで歩く。うら山への入り口には、前に観察に来たときには目立たなかった、ススキが生い茂っていた。足下の草や枝に注意しながら山のなかへ入っていくと、先頭で歩いていた私はクモの巣に絡まった。7月下旬にたくさんのキノコを見つけた、森のなかでも日ざしの注ぐ場所へと向かう。その場所に着くと、朽ちた倒木のみが残されており、鮮やかに輝いていたキノコたちはすがたを消していた。倒木は、どこか寂しげに見える。木の分解が進んだことでキノコたちは役割を終え、すがたが見えなくなってしまったのだろうか。奥へ進むと、以前の観察で見つけたコフキサルノコシカケだと思われるキノコをふたたび発見した。厚さが薄くなっていて、見ただけでも乾燥しているのが分かる。もろくて、今にも消えてしまいそうだ。鮮やかさはなくなり、木に似た色に変化していた。私が夏休みを満喫しているあいだも、木の分解をしつづけていたのだろう。キノコは短い期間ですがたを消してしまう。身近に潜むうら山だけでなく、私たちの生活の身近な場所でもきのこを探してみることにした。本学2号館近くにある大きな木には、サルノコシカケの仲間が生えている。森のなかでも見たことがないほどの大きさだ。木を見上げ、目を凝らすと、その存在が確認できる。木にずっしりと密着し、静かに私たちの生活を見守ってくれているようだ。学内では他にも、切り株に大きなサルノコシカケの仲間が生えているのを見つけた。うら山へ観察に行きはじめてから、今まで気づかなかった発見ができるようになった。うぐいすホールの近くにある楽山球場でも、種類の異なるキノコが寄りそって生えているのを見つけた。クリーム色をした笠が広い大きなキノコの隣には、笠が茶色くて丸く、笠の表面に斑点の模様がついたテングタケと思われるキノコも生えている。気づいていな

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