FN115号
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41店内で食べられるランチセットは、サラダとドリンクがつくためより満腹感がある(2023年12月2日)メニューには、お子さまランチや食べごたえのあるランチ、濃厚で美味しいスイーツがそろっている。夜になるとお酒の提供が始まり、22時までディナー限定の料理を楽しむことができるそうだ。さまざまなお客さんに配慮されているんですね、と私が言うと、黒澤さんは「ダイニングって、人が集まって、ご飯食べるじゃないですか。ここもそんな風になればいいなと思って」とおっしゃる。子どもから大人まで、どんな人でもくつろいでほしいという願いが、このカフェにはこめられているようだ。はじめてのジビエカフェだけではなく、キッチンカーでも売られているジビエサンドを食べてみた。ジビエ(※)のなかでも臭みが少ない鹿肉を使ったホットサンドは、とても食べやすい。ピクルスの酸味とマスタードのまろやかな辛味、鹿肉のうまみが口いっぱいに広がる。サクッと焼き上げられたパンのさりげない存在が、具材の味をひき立たてているようだ。山梨は鹿の増加が問題になっているそう。野生動物が増えすぎると、農作物が荒らされたり、車と衝突してしまったりする。このような獣害の問題をお客さんに知ってもらうためにも、ジビエ料理を提供しているという。鹿は食べられない貴重な存在だと思っていた。しかし、ジビエサンドに出会って、はじめて鹿肉を食べる文化があることを知った。じっさいに食べたことでおいしさに気づき、他のジビエも食べてみたくなった。今までなら思いもしなかっただろう。カフェに出会ってから、私の世界がほんの少し広がっている。「Cafe&Dining tinymany」は、季節のうつろいを味わえる自然豊かなカフェだった。誰もが集うことを目標に、子どもから大人まで利用しやすい工夫がなされている。提供しているメニューは美味しいだけでなく、獣害という地域にかくれた問題を教えてくれた。都留で人が集まり、都留と向きあう場所として、このカフェは存在しているようだ。カフェが出会いと会話を生み、キッチンカーが都留の魅力を外へ発信する。黒澤さんは、多くの人が都留を知り、都留で活動するきっかけを作りたいのだそう。私はこのカフェを知ったことで、都留のお店や行われているイベントを知ることができた。「私がきっかけを作っていただいた第一号ですね」と言うと、黒澤さんは目を細めて笑った。カフェに興味を持って始めた取材だったが、お話するうちにカフェの経営に力を注ぐ黒澤さんにも興味が湧いてきた。なぜそれほど都留を愛し、都留のために活動するのか。活動の原動力は何か。気になることばかりだ。次号では、黒澤さんご自身のお話をうかがっていく。高橋美唯(地域社会学科1年)=文・写真原口桜子(学校教育学科2年)=写真※食べ物として狩られた、野生の獣や鳥の肉のこと。

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