FN115号
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45カウンターに立つ中村さん。やわらかい表情とコーヒーの湯気に、気持ちがあたたかくなる(2023年12月6日)中なかむら村操みさおさん(71)は、喫茶店「バンカムツル」のマスターだ。大学の授業が終わってお店を訪れたさい、壁に新聞記事が貼ってあることに気がついた。それは中村さんがコーヒーの勉強のために海外に行ったことに関する記事だった。いったいどのような経験をされてきたのだろう。と幹枝葉か学び育つらバンカムツルへ8月下旬、お店を訪れると、中村さんが優しい笑顔で「いらっしゃい」と迎えてくださった。テーブルにつき、マスクを外すと、コーヒーの香りが鼻の奥に広がる。お店自体にしみ込んでいるような、濃くて落ちつく香りだ。店内を見わたすと、4人掛けのテーブルとカウンター席が3つずつ並んでいる。この日はカウンターに女性のお客さんが座っていた。中村さんとなごやかに談笑している。さっそくチョコレートケーキとカフェオレを注文した。口のなかで溶けていくチョコレートをゆっくりと味わう。カフェオレを飲むと、生クリームの甘さのあとにコーヒーの酸味が追いかけてくる。コーヒーの風味がおいしいと感じられるカフェオレは今まで飲んだことがない。中村さんはこのコーヒーにどのようにしてたどり着いたのだろう。コーヒーとの出会い中村さんは26歳のころ、コーヒーの勉強を始めた。以前はコーヒーについて知識はなく、特別好きでもなかったという。それでもコーヒーを学ぼうと考えたのは、友人から焙煎が難しいと聞いたからだそう。難しいことにこそ挑戦しよう、と中村さんは一念発起する。本屋でコーヒーに関する雑誌や専門書を買い込み、全国の喫茶店に足を運んだ。しかし、おいしいコーヒーの淹れかたをお店の人に教わることはしなかったそう。中村さんは、淹れかたを知ったとしても、自分の口で感じ取れる以上のおいしさを作ることはできないと思ったという。私だったら淹れかたを教わって、はやくおいしいコーヒーにたどりつこうとするだろう。自分の味覚を信じておいしさを追求するすがたに、中村さんのこだわりを見ることができた。元をたどる日本各地の喫茶店をまわった後、中村さんは海外へとわたる。私が興味をもっていた話だ。すかさず海外へわたった理由を尋ねた。すると中村さんは、「元をたどるため。いろいろな勉強方法があるけど、自分はそういう風に勉強する」と、迷いなく答えた。元をた

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