FN115号
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47※②毎日の平均気温を合計したもの難しいですねと言うと、中村さんは「そんなことないよ。数学や英語や理科、どれも今まで学校で学んだこととの縁だよ。(学んだことは)絶対に役に立つから先人たちもやってきた」と、力強くおっしゃる。今まで学校で習ってきたことがどのように活きてくるのか、想像がついていなかった。「学んできたこととの縁」がこの先現れるかもしれないと思うと、学びが無駄になることはないのだと確信することができた。﹁幹﹂と﹁枝葉﹂中村さんは、お店の入り口付近に本誌の過去号を置いてくださっている。編集部員がよくバンカムツルに来ることがきっかけだったそう。「いつも見守ってくださってありがとうございます」と頭を下げると、「見守ってるとかそんなんじゃないですよ。学んでるの」と意外な言葉が返ってきた。私たちの記事が学びの元になると考えると、自然と背筋が伸びる。続けて中村さんは、「皆さんもいろんなことを経験すればいいよ。幹から枝葉は広がっていくんだから、よいことも悪いことも、勉強もなんでもすればいい。自分のなかで幹になるものさえ持っていれば」とおっしゃった。中村さんにとって幹や枝葉とは何なのだろうか。中村さんは、答えになっているか分からないけれど、と前置きしてからこうおっしゃった。「みんなと違う自分、良い面だけじゃない悪いところもある自分。そんな多面的な自分を受け入れること」。「幹」が色々な面を含んだ自分のことを、「枝葉」がそんな自分が経験していくさまざまな出来事を指しているようだ。私はよい自分、立派な自分ばかりを目指そうとして、上手くいかずに挫折することが多い。中村さんのお話を聞いて、そのような自分も受け入れていいのだとほっとした。       ***中村さんのゆったりとした話しかたやコーヒーを淹れるすがたを見て、最初は物静かな印象を抱いていた。しかし、お話を聞いているうちに、難しいことにこそ挑戦してきわめようとする中村さんの活力にあふれた一面を知ることができた。勇気が出なくて失敗を避けようとする自分とは正反対だ。だからこそ、中村さんの考えや歩んできた道のりをたくさん教わりたくなった。経験と学びを重ね続けてきた中村さんからは、私の想像がおよばないような話が広がることもあった。しかし、中村さんのように、いろいろな自分を認め、多くの経験を積んでいくことで、中村さんのお話が自分と重なるときがきっとくるだろう。「幹」を太く、「枝葉」を広く育てたい。中村さんとのお話は、目指したいものを見つけるきっかけとなった。横山幸乃(国文学科1年)=文・写真カウンター席のお客さんと話す中村さん。身振り手振りを使って楽しそうに話している(2023年10月18日)

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