FN115号
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49う。調理方法がシンプルだから、食べても胃が重たくならない。だからこそ何度も食べたくなってしまうのだろう。ふだん私がつくる料理は調味料がないと成り立たない。同じ食材でも、てまひまをかけると美味しくなるのだと気づかされた。食材と向き合う希さんは調理方法や味付けだけではなく、食材にもこだわっている。都留市や周辺地域で生産されたものを中心に使い、地産地消を目指している。野菜の多くは、カフェのワークショップで知り合った「はのさち農園」や友人が運営する「フォレストアイランド」という農園、マルシェで友人を通じて知り合った「浅田農園」から仕入れている。いずれも都留市の農家さんだ。足りないものは都留文科大学前駅近くの農協の直売所で調達する。出荷している農家さんたちが「ちょっとこれ(もう古いから)下げちゃって」と新鮮な野菜にこだわるようすがいいのだと、農家さんの身ぶりをまねながら説明してくれた。希さんは農家のみなさんが熱心に野菜づくりに取り組んでいることをいきいきと教えてくれる。そのすがたからは、食材への愛情や真摯に向き合うことで生まれる熱が伝わってくる。現在の蒸し料理も、いくつかのメニューを試したすえにたどり着いたものだ。希さんは開店後も使う食材を吟味し、季節に合った食事をお客さんに届けている。人生の転換点希さんはもともとアパレル関係の仕事をしていた。しかし、事務職に転職したさいに環境のストレスから体調をくずしてしまったという。そのときに注目したのが発酵食品だ。からだにいい食品と話題になっていたことと、もともとぬ·か·床を持っていて馴染みがあったことから、毎日の食事に発酵食品を取り入れはじめた。するとからだの調子がどんどん改善したそうだ。しだいに希さんは、1日3回の食事でどれだけ体にいいものを食べられるか工夫するようになった。体調をくずすというマイナスなできごとが、希さんの人生の転換点になったのだ。バンカムツルの存在希さんのご両親は、1階のバンカムツルを営む中村さんご夫妻だ。もともとは2階もバンカムツルだった。しかし、母親の葉子さんが2階に上がるのが大変になったことをきっかけに、希さんが2階の一部を間借りするかたちで、新たにお店を構えた。希さんはもともと料理人だったわけではないため、当初は自分の料理に説得力がないと感じていた。そこで「一度始めたら、やりきらないと」と本や通信講座で勉強し、発酵食品と薬膳に関する資格を取得した。それでも、長年愛されてきた場所でお店を開くことには料理に使われている糀が書かれたおしながき。糀は低温調理器に6時間ほどかけて完成するそうだ(2023年10月31日)
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