116号マスターHP用
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no.116 Mar. 202428自然科学棟の天井で越冬するテントウムシ(2024年2月14日)本誌の過去号では、本学で越冬するテントウムシについて何度か取り上げている。今年も変わらず、テントウムシは越冬しているのだろうか。過去の記録と比較してみたいと思い、観察に向かった。今年の冬は本学の自然科学棟には、毎年10月下旬から11月にかけて、テントウムシが越冬にやってくる。なかでもナミテントウは数が多く、集団で冬を越す。1980年代には、自然科学棟全体で10万匹以上が越冬していたという記録がある。しかし、その数は年々減っている。2021年には、100匹ほどだったという。今年は、相当少なくなっているかもしれない。まずは、越冬しているテントウムシをひと目見たい。1月10日に自然科学棟へ向かった。さっそく、1階の壁に1匹のテントウムシを見つけた。すぐそばには外階段がある。階段の下から見上げると、壁の細い溝やつき当たりの角、天井にいくつもの黒いかたまりが見えた。「本当に集団で越冬するんだ」。白い壁にある黒いかたまりはとても目立つ。これほど人目につく場所で冬を越す生きものがいるのだ。私が大学と家を行き来しているときも、テントウムシはどこかでひたすら春を待っているのだろうか。自然科学棟のテントウムシ1月27日は、日差しがあって暖かかった。今日は、自然科学棟の最上階である6階まで上ってみよう。4階から5階へ上っていくと、階段を1匹で歩いているテントウムシがいた。うっかり踏んでしまうところだった。しゃがんで顔を近づける。黒い背中に赤い点を二つもつテントウムシだ。日光が当たっている明るいところから暗いところへ、ちょこちょこと移動していく。冬のあいだ、一か所でじっとしているわけではないようだ。これから集団に合流するのだろうか。足元、床のすみ、階段の両脇、天井を注意深く見ながら上っていく。どの階にも黒いかたまりがある。テントウムシは何階を目指して飛んでくるのだろう。6階まで上りきり、今度は下っていく。すると、階数が下がるにつれて、集団の数が増えていくことに気がついた。そして、一集団の大きさは小さい。1匹でいるテントウムシもちらほら見かける。上に行くほど集団は大きくなり、テントウムシが密集している傾向があるようだ。2月7日、2日前に降った雪が残るなか、自然科学棟へ向かった。寒いから、テントウムシは集団でじっとしているはずだ。しかし、階段を上り始めるとすぐに、そうではないことに気がついた。前回観察した暖かい日よりも、多くのテントウムシが床を歩いているのだ。動きまわったら、冬を越せなくなってしまうのではないかと心配になった。私のほうがよほど、寒さに身を縮めている。今回は集団ごとの個体数を数えてみる。自然科学棟の壁には、縦幅が1・5センチほどの細い溝がある。2センチ四方に6匹。5センチくらいの隙間には20匹。手の届くところテントウムシの冬
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