116号マスターHP用
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29【参考書籍】山下恵子「テントウムシが飛んだ日」『ナチュラリスト入門 落ち葉の手紙 秋』岩波書店 1989年 阪本優介『テントウムシ ハンドブック』文一総合出版 2018年には定規を当てて、天井はおおまかに数えていく。数えているあいだに、もぞもぞと動きだす個体もいる。数を数えることに夢中になって、足元のテントウムシを踏んでしまわないように注意する。平均すると、1センチ四方に約2・5匹のテントウムシが集まっていることがわかった。キャンパス内のテントウムシテントウムシは、白色をほかの色と見分けることができるといわれている。乾燥していて越冬に適している場所だと判断し、白い建物に集まってくるらしい。キャンパス内にある、自然科学棟以外の白い壁の建物にも、テントウムシはいるのだろうか。美術棟は昨年塗り替え工事が終わったばかりで、きれいな白い壁をしている。道路を挟まずに楽山と接している建物だから、テントウムシが飛んできやすそうだ。自然科学棟と条件は同じに思える。まわりをぐるりと一周してみるが、テントウムシはいない。6階まである2号館の外壁も白い。授業中にテントウムシを見かけたという編集部員とともに、西向きの窓がある廊下を見に行く。6階でさえも、窓枠や床をテントウムシが歩いている。いったいどこから室内に入りこんでいるのだろう。グラウンドに面した小さなベランダでは、複数のテントウムシが歩きまわっていた。外壁にも数匹見つけた。ほかの建物にも、テントウムシはやってくる。2号館には、活動している個体がいた。しかし、越冬している集団は見ることができなかった。白い壁だけがテントウムシが集まる理由ではないようだ。テントウムシが2号館に集まってくるのは、日当たりが良いからだろうか。そう考えると、美術棟で1匹も見当たらなかったのは不思議だ。美術棟は自然科学棟より高いところにあり、日光をさえぎる建物がない。そのため、道路側の外壁にはよく日が当たる。また、過去の記録と異なっているのは、カメムシなどのほかの昆虫が見当たらないことだ。見落としているのかもしれないが、足元を歩いているのはテントウムシばかりだった。キャンパスのようすは少しずつ変わってきている。昨年は新しい建物が完成し、最近は自然科学棟に面した道路で工事が行われている。天候だけでなく、環境の変化も昆虫の生活に影響を与えているのだろうか。 ***調べれば調べるほど、疑問は増えていく。今までは、テントウムシを見かけても気に留めなかった。私にとって、それだけ身近な昆虫だったということだ。冬に昆虫たちをあまり見かけなくなっても、かれらがどう過ごしているかなんて、考えたことがなかった。テントウムシは自然のなかだけでなく、人がつくった建物でも、寒さに耐えて春を待っている。暖かい季節にテントウムシと再会したら、「お疲れさま」と声をかけたくなった。①黒地に赤い点を2つもつナミテントウ。キャンパス 内でいちばんよく見かける(2024年1月27日)②赤地に黒い点をたくさんもつナミテントウ。橙色の 個体もいる(2024年2月7日)③三日月のような形の斑紋をもつテントウムシ。にや りと笑っている顔のようだ(2024年2月14日)④自然科学棟で唯一出会ったナナホシテントウ。階 段の角でじっとしていた(2024年2月14日)①②④③印南響(比較文化学科1年)=文・写真
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