116号マスターHP用
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no.116 Mar. 202442管弦楽団の練習のようす@青藍会館(2024年2月17日)テンポにのって、メロディーが伸びやかに響く。爽やかで飾らない都留の自然が思い浮かぶ。客席を見ると、目を細め音楽にひたるような表情で演奏を聴いてくださるお客さんが目に入った。いったいどんな気持ちで聴いてくださっているのだろうか。歌と重ねていく吉田先生は「合唱団の人は歌詞カードを見ずに歌えるし、演奏会が終わったあとに、この歌の名前を聞きに来る人がいるんだよ。素敵な歌だし、もっと知名度があがってほしいね」と笑顔で話した。音楽でつながりたいという先生の気持ちが伝わってくる。じつは、本番の日に舞台にあがっていたのは都留市民だけではない。オーケストラのメンバーとして、当楽団のOBやふだんから団員を指導してくださっているプロも混ざって演奏している。音楽は形があるものではないけれど、人が集うことで音楽がつなぐものを確かめることができる。思い通りにいかなかった時間があったからこそ、そう思える。毎年同じ場所で、都留を思いながらひとつの歌を共有する場に加われたことが誇らしい。団員の数名にも話を聞くと、印象に残る言葉があった。「同じ曲を長年演奏していたとしても、毎年思い入れが変わると思う。きっと、この曲に一年間の頑張りや都留での生活が積み重なっていくよね」。その言葉を聞いて演奏会のときに見たお客さんの表情を思い出した。あのとき、それぞれの目にそれぞれの都留の景色が広がっていたのかもしれない。「四年間、この都留で過ごすからこそ、解像度の高い都留が思い浮かぶような『今、生きてます』を演奏していきたいね」と話す団員の笑顔がまぶしい。一年後、この曲を演奏するとき、私はどんな都留の風景を思い浮かべるのだろう。まだ知らないこのまちの一面に出会いたくなってきた。***歌の成り立ちや演奏に関わる人の想いを知り、あらためて演奏すると、都留での一年間がよみがえってきた。新生活に緊張していた春。友だちとの出会いにときめいた夏。祭りでおめかしをした谷やむら村のようすに心が躍った秋。都留での生活が少し楽しみになるような歌と出会った冬。都留で感じたことが音となって、楽譜に彩りを加えていくのだろう。都留の人びとにとって、この歌と都留での生活は、共に重ねていくものなのかもしれない。私はこれからも、文字に残すまでもないほどのささやかな思い出を大学生活として積み重ねていくだろう。その四年間は、『今、生きてます』に重なっていくはずだ。このまちで歌い継がれる『今、生きてます』という曲名の意味が手に取るようにはっきりした。都留に響くこの歌は、今日もまちの人びとと共に生きている。
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