116号マスターHP用
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no.116 Mar. 20244620歳の黒澤さんがつくった「ウィッシュリスト」の抜粋夢で終わらせない黒澤さんは本学の卒業生だ。在学当時の生活についてうかがうと、記憶を辿るように遠くを見てから「ウィッシュリストをつくっていたな」とおっしゃった。ウィッシュリストとは、やりたいことをリストアップし、実行できたらマークをつけることで、できたこととできなかったことを可視化するものだそう。はじめに10個ほど立てていた目標は、大学3年生のときには100個を超えた。私も大学の講義でやりたいことをリストアップした経験がある。しかし15個しか浮かばなかったため、好奇心の違いをしみじみ感じた。やりたいことがたくさんあったんですね、と言うと「そうでもないよ」と黒澤さんは笑いながら首を横に振る。ひとつの目標を細分化して自分のやるべきことを明確にしただけだという。とるべき行動が明らかになると、ばくぜんとした目標が達成しやすいものに変わる。これを黒澤さんは続けてきた。夢に向かって進む黒澤さんの行動力は、つぎつぎと挑戦することが好きなところから発揮されるのだ。出会いを大切にする黒澤さんは大学生のとき、海外に行ってみたいと考えていたそう。足を踏みいれていない場所への憧れと、自由な時間があったからだ。また、2年生の冬にゼミへ所属したことも、海外へ行きたい気持ちを後押しした。東南アジアを中心に研究を進めるゼミだが、黒澤さんは東南アジアに行った経験がなかった。せっかく学ぶなら自分の五感を使って国を知りたいと考え、アルバイトで資金を集め、2年生の春休みにマレーシアへ飛び立った。旅行資金は日本円で4万円。予算にまったくゆとりのない旅行プランだ。旅行先でたくさんの物を買ってしまう私なら、2日足らずで予算を使い切ってしまうだろう。マレーシアに着いた日の夜に宿泊先であるゲストハウスに行くと、屋上が開放されていた。せっかくなら行ってみようと屋上にのぼると、欧米からの旅行客たちがたくさんいたそう。ほとんどが中高年だったため、当時20歳だった日本人の黒澤さんはとても目立った。そのうち声をかけられ、お互いの出身地や身のうえ話で盛りあがったという。その流れで、仲を深めた人から地元の人しか知らないような海岸に行ってみないかと提案された。翌日以降の予定を決めていなかった黒澤さんは、せっかく出会えた縁を大切にしようと提案にのった。地元の人や他の旅行客と出会わなければ得られない特別な体験だ。時間的な余裕を持っていたからこそかもしれない。西洋や東洋の文化と人が混ざりあう東南アジア独特の世界に、心が惹きつけられたと黒澤さんはおっしゃった。帰国後は身近なところにも多文化の共存が生まれる場所はないか探しはじめた。あるとき、立ち寄ったカフェで、老若男女がそれぞれ好きなことをして過ごしているすがたを見つけたという。黒澤さんが考える多文化の共存のイメージと、そのすがたがピッタリ重
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