116号マスターHP用
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47高橋美唯(地域社会学科1年)=文・写真なったため、カフェに興味をもち、カフェ文化の研究をはじめたそうだ。第二の故郷研究の第一歩として、世界中のカフェを見たいと思った黒澤さんは、3年生のうちに卒業に必要な単位の大半を取りきり、休学をして世界一周をはじめた。合計70か国をバックパックひとつで渡り歩いたそう。カフェの文化を研究するにはカフェで飲食する必要があったため、どうしても食費がかかってしまう。ならば他の費用をおさえようと、テントに寝泊まりしたり、なるべく徒歩で移動したりと、お金がかからないよう工夫をした。旅をしているさなかに、黒澤さんは都留に帰りたいとしばしば思ったそう。どうしてですか、と私が尋ねると、「海外と比べて、都留の方が安心感があったからかな」と黒澤さんは顔をほころばせておっしゃった。黒澤さんは、都留で家庭教師のアルバイトをしていた。そこで勉強を教えている子のご家族と馬が合い、家族ぐるみの仲になるほど大切にされたそう。いっしょにご飯を食べ、旅行をするほど仲が良かったため、近所の人からは「○○さんちの長男」と勘違いされるほどであった。楽しい時間を積み重ね、気兼ねないやりとりができるほど都留の人と仲を深めていた。それほど都留が居心地の良い場所だから、都留を大切に思う気持ちが育まれたのだろう。旅から帰ってきたころには、黒澤さんは都留に多文化が共存する場所を作ろうと決めていた。都留がこれからも関わっていきたいと強く思える場所だからだろう。ご縁で1か月ほど滞在させていただいたご家族との1枚。車の定員を超えても、車体にしがみついて移動することがしばしばあったそう(2016年12月,パキスタン 写真提供=黒澤さん)集う、憩う夢を具体化してじっさいに行動することが、黒澤さんの目標達成の秘けつであった。そして新しいことに挑戦することが好きだったからこそ、行動し続けられたのだろう。目標に向かって行動しているうちに、思いがけないたくさんの出会いがある。ひとつの出会いを受け止める余裕と大切にする気持ちが、新たな縁を結んでいた。それらが集まって黒澤さんのカフェはできている。また、会話や体験を重ねることで自分を素直に表現できるようになってゆく。そうして心をゆるせる人が周りに増えていくのだろう。それらを繰りかえすことで、どんな場所でも安心できる居場所が作れるようになるのだ。そうしてできた居場所が、挑戦を後押ししする。挑戦を続ける黒澤さんには、安心できる居場所がたくさんある。出会いという点が、やがて線となり、夢の実現へと形を結ぶ。いつか手にする夢のためにも、今の出会いを大切にして居場所を増やしていきたい。
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