117号HP用
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あとから聞いた話だが、私が参加した観察会には、300人ほどの参加者が集まったそうだ。ミツマタの花に誘われて、こんなにもたくさんの人が山に訪れているとは想像もしていなかった。好奇心のまま足を運んでみたり、ふたたびミツマタを見るために群生地を目指したりと、それぞれに異なる想いで参加したのだろう。***名前に惹かれて群生地を訪ねると、花が開く前のミツマタに出会った。籾が集まっているような形のつぼみを見るのははじめてで、開花のようすを想像すると胸が躍った。やがて満開になると、ミツマタは多くの人を惹きつけ、山へと誘っていた。ミツマタを見るために何度も山を登る人がいるほどだ。ひとつの花は小さくて目立たない。しかし、山の斜面に群生していることによって、やわらかな黄色い花がきわだつ。葉のくすんだ濃い緑色や木々の褐色のなかでひっそりと咲くミツマタのすがたは、私の心にしっかりと刻まれた。都留市役所から3時間ほど歩いて、ようやくミツマタ群生地にたどり着く。斜面の上から群生地を一望すると、全体がミツマタによって黄色く色づいていた。以前、訪れたときは、うすい黄緑色のつぼみが残っていたが、今はもう満開だ。たくさん歩いて乱れた呼吸を整えようと深呼吸すると、ほんのりと甘い香りが鼻をくすぐる。周囲の木や土のにおいが混ざり、落ち着いた香りがただよっている。「やはり、とてもきれいですね」息をもらしながら岡本さんはカメラを取りだし、満開になったミツマタに向けてシャッターを切る。岡本さんは昨年も観察会に参加されたそう。何度も足を運びたくなる引力のようなものを、ミツマタは持っているのだろう。ゴール地点である田たはら原の滝に着くと、テントが張ってあった。「お疲れさまでした」とテントのなかにいる人たちが笑顔で迎えてくれる。ねぎらいの言葉と笑顔で、疲れが和らいだ。記念に、都留市が特別に作った缶バッジと、ゴールを祝う賞状をいただく。ささやかだが、自分の頑張りが形になったことが嬉しい。せっかくなので、記念品を手に岡本さんと一緒に写真を撮らせていただいた。満開のミツマタ群生地のようす(2024年4月5日)高橋美唯(地域社会学科2年)=文・写真

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