117号HP用
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12no.117 Jul. 2024大きなナシの木は、首を直角にして見上げても陽の光で木のてっぺんが見えないほど高い。以前、夜中に、突風で大きな枝がドサっと折れ、それとともに木を支える鉄柱が倒れたという。それでも、毎年4月には、白いきれいな花を咲かせるそうだ。「昔は、実がたくさんなるから重さで枝が下がるほどだったんだ。でも、最近は実はならないね」と安田さんは悲しげに話す。今まで私の身近にあった天然記念物は、どれも神社やお寺などで手厚く保護されているものだった。安田さんのお宅に植えられている梅とナシの木は、家という個人の生活に近い場所にも、天然記念物の存在があることを教えてくれた。受け継がれてきたもの安田家の歴史は長い。玄関の上の壁に、「文化」という江戸時代の元号が記されているほどだ。現在安田さんが住んでいるこの家も、代々受け継がれてきたそう。縁側に座り、屋根裏を見上げると、かつての茅かやぶ葺き屋根が顔をのぞかせている。安田家の人びとが同じ土地で暮らしてきたと聞くと、八房の梅やナシが誰によっていつ植えられたのか気になる。しかし、家主である安田さんでさえ分からないという。「江戸時代に家を建てたときに、すでに八房の梅の木やナシの木があったかもしれないね。それか先祖がたまたま特別な木があったところに、家を建てたのかもね」と笑いながら話す。2本の木は、安田さんのお父さんが天然記念物に登録したという。登録の申請には複雑な手続きが必要で、時間がかかるそう。そのため、安田さんのおじいさんの代から、県や市に天然記念物へ登録する話を持ちかけていたかもしれないという。「おじいさんは、山梨県議会議員を務めたこともある人で、天然記念物の登録に積極的だったんじゃないかな」。おじいさんからお父さん、そして安田さんへ、梅とナシの木が天然記念物として代々受け継がれてきたのだ。上大幡のナシ安田さんのお宅で、思いがけない嬉しい出会いがあった。前庭に、県の天然記念物に指定されている「上大幡のナシ」があったのだ。昭和35年、梅の木よりも先に、天然記念物に登録された。敷地内に2つの天然記念物があることに驚いてしまう。上:ナシの木に寄り添う安田さん。以前は、 1本の木から2種類のナシが採れたそう下:八房の梅の木の下には池がある。少し前 までコイが泳いでいた安田さんの家。前庭(写真左)に県の天然記念物である「上大幡のナシ」があり、裏庭(写真右)に市の天然記念物である「上大幡の八房の梅」がある
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