117号HP用
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1515みんなに喜んでほしいから」と陽子さんは話す。店内に飾られている手書きのポップから、きっと陽子さんの細かいこだわりがあるのだろうと思っていたので、「万人受け」という言葉に驚いた。この言葉はありきたりなものに対して使うことが多い気がしたからだ。でも、お店が目指す「万人受け」はどこか違う。これをあげたらどんな表情をしてくれるだろうと想像したくなるような、素敵な商品が店内にあふれている。陽子さんの「たくさんの人に喜んでほしい」という想いが、商品を通して、プレゼントをもらう人にとっての唯一無二のものになっているのだ。「万人受け」で「唯一無二」を生み出す。こだわりがつまったお店だ。都留のお客さんは、温和で、堅実な人が多い印象だそう。「売れる商品は、8割がプレゼント用だね。ゴージャスなものではなく、ささやかなプレゼントをしている人が多いかな」と話す。お話をうかがっていた30分ほどの時間でも、お客さんはひっきりなしにやってきた。ここは、都留の人が親しんでいる花屋さんなのだ。私も、母の日のプレゼントをここで選ぼうと決めた。母の日の花屋さん母の日が近づいた5月のはじめ、もう一度お店へ足を運んだ。お店のドアを開け、目に飛び込んできた店内の色鮮やかさに思わず息を飲む。赤色・ピンク色・黄色などのカーネーション、水色や白色のアジサイがきらきらと光っていた。店内は、母の日らしいあたたかさで満ちている。大きく息を吸い込むと体に花の甘い香りが行き渡って、自分が花束のなかの一輪になったような気がしてくる。なんて幸せな空間なのだろう。今日は、私も鹿児島に住む母への贈り物を選ぶことにした。かごに入った花や鉢植え、ハンカチやマグカップなど商品の種類がとても多い。一緒に来た友人の顔を見ると、わくわくしたようすで商品を選んでいた。友人の笑顔を見て、私まであたたかい気持ちになる。お店に来ていた小学生くらいの男の子が、鉢植えを抱えてレジに運んでいた。母の日のプレゼントだろうか、照れくさそうなようすだ。身近な人ほど、感謝を伝えるのは少し恥ずかしくなってしまう。気持ちがよくわかって、応援したくなった。右:手書きのポップ。商品の効能や特徴がわかり やすく書かれていた(2024年6月28日)左:店内のプチギフトコーナー。ハンカチやマグカ ップなどたくさんの商品が並んでいる (2024年5月10日)
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