117号HP用
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21春先に花を咲かせたあと、カタクリは実をつける。19日の観察で触った、すべすべしたそら豆のようなものの正体だ。実のなかには種が入っていて、その種が地面に落ちることで、新しい命が芽吹くのだという。文大とつるりんそもそも、つるりんとは本学にとってどのような場所なのだろうか。別宮先生によると、つるりんが作られたのは約45年前、本学にまだ1号館しかなかったころのことだ。教職員が、山から持ってきた苗木を1号館とグラウンドのあいだに植えた。現在約70種類もの木がつるりんに生えている。つるりんが作られたきっかけははっきりしないが、今では本学の学生にとって欠かせない場所になっている。つるりんは1号館の南側にあるため、教室に日が直接差し込んでくるのを防ぐ。また、つるりんにはグラウンドで使われたボールが飛び込んでくることがある。つるりんがなければボールが教室に飛んでくるかもしれない。別宮先生は、「つるりんは天然のクーラーとフェンスの役割を果たしている」と教えてくれた。教室の横でゆさゆさと揺れている木々は、じつは私たちの学校生活に寄り添ってくれているのだ。そう思うと「いつもありがとうね」とつるりんの木たちをいたわりたくなる。つるりんは植物と学生の両方にとって、いくつもの役割を果たす。しかしつるりんを訪れる学生は多くはないそうだ。自然が豊かであるということは、人の目には雑多に映ってしまうことがあり、立ち入りにくくなってしまうからだ。別宮先生は「今後、つるりんを人と生物多様性が共存できるような場所にしていけたら」とおっしゃった。*  *  *身近であるがゆえに、今までつるりんに目を向けることがなかった。足を踏み入れてみると、カタクリをはじめとした、いろいろな種類の草花が息づいている場所だと気づいた。自然の豊かさは、つるりんが40年以上をかけて本学とともに生長し続けてきた証なのだ。これからもつるりんで暮らす植物たちがのびのびと育っていってほしい。学生たちでにぎわうキャンパスで、今日もつるりんの草花はゆったりと風に揺られている。横山幸乃(国文学科2年)=文・写真③④②②カタクリの花(2024年4月3日)  (菊池香帆さん=写真提供)③クサノオウ(2024年5月19日)④キランソウ(2024年5月16日)①①つるりんの木々(2024年6月19日)つるりんで出会った植物

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