117号HP用
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4444no.117 Jul. 2024 もくじ都留の湧き水坂を上って出会ったものすがたを変えても石を見つめなおす音を辿った先に青いモミジの並木道雨のなかの出会いツバメのすがた大迫力の御ごしんぼく神木道端からのエール果実、いろいろ444948474645江袋巴(国文学科1年)=文・写真都留の湧き水都留に来て感じた地元とのいちばんの違い、それは水だ。ここに来る前は、用水路は濁にごっているのがふつうだと思っていたが、都留ではどこも透き通っている。この水はどこから来ているのだろう。家にやって来る前の水が見たくて、用水路をたどり、長ちょうけいじ慶寺近くの湧ゆうすいち水地へ向かった。強い日差しを浴びながら、目的地に続く道を進む。近づくにつれ、水のせせらぎ、周りの木の青々とした色が、暑さを和らげてくれる。湧水地に着くと、水面を覆うバイカモが目を引いた。白い花が緑色の葉を飾るすがたは、可憐で美しい。この水は特別なのだろうか。あとでバイカモは、きれいな水にしか生息しない植物ということを知った。池の奥をのぞくと、岩のすき間から水が流れているのを見つけた。長慶寺の湧き水は、富士山に蓄えられた地下水が湧き出たものらしい。手を伸ばして飲んでみる。水道水よりも爽やかで、すっきりした味だ。蛇口を通る前の飲み水に、はじめて触れることができて嬉しくなり、思わず顔がほころぶ。湧き水を通して、少し遠くの富士山にたまった水が、身近に感じられた。水の美しさは、都留へ来ていちばん強く感じた魅力だ。だからこそ、湧き水を直接すくい、味わった体験は、私とまちの距離を縮めてくれた気がした。水を飲んだところとは別の湧き水。水がとめどなく湧き出ている(2024年7月4日)

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