117号HP用
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46石を見つめなおす入居日の前日、都留市駅付近で見たことのない石を見つけた。海があるまちで育った私は、よく家の近くの砂浜で石を集めていた。懐かしさから手に取ってみる。石は、黒に近い灰色で小さい穴が多くあり、ごつごつしている。地元によくある石は、青緑色でさらさらとした手触りだった。珍しい石が道端にあることに驚く。後日、大学の授業で石の種類が溶岩石だと分かった。火山の周辺で採取できることが特徴で、滝で多く見られるようだ。そこで、授業で知った夏なつがり狩地区の滝を訪れた。滝から少し離れた場所の足元に、溶岩石らしき石があった。手に取ってみると、表面が水流で削られたからか、手触りはなめらかだ。さらに滝の近くにある石を拾う。石の表面にはコケが生えていて、ぬめりがある。同じ溶岩石でも、最初に滝から少し離れた場所で見つけた溶岩石。小さな葉の下には生きものが隠れていた(2024年5月23日)島本彩音(学校教育学科1年)=文・写真西田伊吹(国文学科1年)=文・写真かつて芭蕉が句の題材に詠んだ田原の滝(2024年5月29日)音を辿った先に都留に来て一ヶ月が経ったが、緊張と不安はまだ消えない。重い足取りで本学への道のりを歩いていると、水の流れる音が聞こえてきた。地元では聞くことのない軽やかな水の音が心地よい。音を辿って歩いてみる。しばらくすると、ゴォーという激しい音に変わった。不思議に思ってさらに足を進めると、滝が現れた。住宅街の目と鼻の先に滝がある。予想外の光景に驚いた。生い茂る木々に囲まれた壮大な田たはら原の滝たきを見ていると、緊張と不安が吹き飛んでいく。しばらく眺めたあと、帰ろうと歩き出すと、松尾芭蕉の句碑が目に入る。先日、大学の授業で話題にのぼったので、興味が湧いた。春の訪れを喜ぶ芭蕉の句を読んで、大学生活を心待ちにしていた気持ちを思い出し、胸が高鳴った。身近な場所に滝があることが不思議で、何度も足を運ぶようになった。天気や時間によって変わる滝の景色や水の音が面白い。滝の水が太陽の光を反射するようすには心を奪われた。雲の隙間から光が差し込み、水面が輝くのを見ると、たちまち清々しい気持ちになる。田原の滝は不安でいっぱいだった私の心を和らげてくれた。気づけば気分も明るくなっている。これからの大学生活、困難なこともあるだろう。そんなときは、この場所にふたたび訪れたい。no.117 Jul. 2024 見つけた石と滝で見つけた石とでは触り心地が違う。石は、それぞれの道を通って、今の場所にたどり着いたのだろうか。石が冒険している光景が頭に浮かんだ。石を見つめなおすと、都留と地元の小さな違いに気づいた。まだ都留には知らないことが多い。だから、この違いはきっと都留を知るきっかけになるはずだ。地元との違いを見つけながら、都留のことを一つひとつ知っていきたい。
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