117号HP用
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47生協前のモミジ並木。勢いよく伸びた枝の下を歩くとトンネルを抜けていくようだ(2024年6月9日)青いモミジの並木道入学式が終わり一週間ほど経ったころ、私は本学の敷地内にある生協の店舗を目指して歩いていた。入り口へ続く道に背の高い木が連なり、色濃く影を落としている。葉を見てすぐにモミジの木だと分かった。空を覆いつくさんばかりの葉は、陽の光に目いっぱい照らされていた。風が吹くと、さらさらと葉の擦れる音がする。柔らかな木漏れ日が差し込むこの並木道に惹かれて、何度も足を運ぶようになった。曇った風の強い日、モミジの種を採って観察していたときのことだ。種をじっと見つめ、ふと顔をあげる。するとモミジの枝えだは葉が目前に迫っていて、思わずドキッとした。風で枝が降りてきたのだ。モミジの葉がいくつもの人の手に見え、種を返してくれと訴えているようだった。申しわけなくなり、怖くもなった。入学したばかりのころ、私にとってこの並木道はのどかな風景だった。しかし今は、どこか謎めいた雰囲気をまとった場所でもある。私の心をざわつかせたからだろう。並木道に通ううちに、モミジは日によってさまざまな表情を見せる木だということが分かった。今ではモミジの葉を眺めるのが、毎日のひそかな楽しみだ。今日も胸を踊らせながら、ゆっくりと並木道を歩いていく。右田ゆずる(国文学科1年)=文・写真カメが口を大きくあけている。小さな恐竜のように見えて、かわいらしい(2024年6月5日)森田夢乃(学校教育学科1年)=文・写真雨のなかの出会い谷やむら村にある銀行に行くために、大雨のなか家かちゅうがわ中川沿いを歩いていた。服が濡れ、憂うつになりながらも足を進めていると、ちらりと赤いものが目に入る。立ち止まって、家中川をのぞきこむと、コイが泳いでいた。思わず「えっ」と声が出る。まちを流れる川に生きものがいるなんて。はじめて見る光景だった。数日後、家中川のコイが忘れられず、また川沿いを歩く。コイを探していると、3匹のカメを見つけた。台の上でひなたぼっこをしているカメは、首をぐんと伸ばして動かない。じっと見つめ続けても、ぴくりともしない。生きているのか不安になったが、のどが動いてほっとした。後日、私はまた彼らに会いに行った。もう何回も観察にきているから、道順はばっちり覚えている。川をのぞきこむと、はっとした。台の上にずらりとカメが並んでいたのだ。訪れるたびに変わるカメの数を数えることが、私の楽しみになっている。数えてみると11匹もいた。その多さに驚いて、「いったい今までどこにいたの」と問いかけた。いつしか、今日はどんな生きものがいるのだろうかと、わくわくしながら家中川に足を運ぶようになっていた。大雨のなか歩いたあの日から、家中川の生きものたちが私の心を晴れやかにしてくれている。くれと訴えているようだった。申しわけなくなり、怖くもなった。都留のまち探検隊

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