117号HP用
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4949果実、いろいろ4月上旬、買い物に行く途中で、見覚えのある葉を見つけて足を止めた。イチゴだ。昔から、果実を探したり育てたりすることが好きだったため、すぐに分かった。ほかにも果実はないのかな。好奇心のままに探してみると、楽らくやま山公園の入り口近くでキイチゴを、やまびこ競技場近くでクワの実を見つけた。3つの果実のなかで、クワの実だけ食べたことがない。どんな味だろう。実が熟すのが待ち遠しくて何度も足を運ぶうちに、あちこちにクワの木が生えていることに気づく。調べてみると、都留では養ようさんぎょう蚕業が盛んだったようだ。蚕かいこはクワの葉を食べる。エサのために植えられたのだろうか。蚕を育てる人もクワの実を食べていたのかな、と想像がふくらむ。6月上旬、熟したクワの実を採りに行く。はじめて食べたクワの実は酸味がまったくなく、とても甘い。イチゴやキイチゴとくらべても、クワの実の甘さは格別だ。おいしさにつられ、つい採りすぎてしまった。最初は、どんな味か確かめたくて果実を探した。そうして見つけたクワは、おいしさだけでなく、かつての都留について考えるきっかけをくれた。都留の自然や人びとの生活は、知らないことばかりだ。食べたことのない果実もある。これからもひとつずつ見つけていこう。採ったクワの実でジャムを作ってみた。素朴な甘みで、種のプチプチとした食感が楽しい(2024年6月8日)脇田晃納環(国文学科1年)=文・写真道端からのエール都留で暮らし始めて数日、見知らぬ土地への不安を和らげようと、はじめての散歩に出かけた。ぽかぽかと暖かい日差しのなかを歩いていると、道端にちいさな黄色の花が咲いていることに気づく。タンポポだ。幼いころ、綿毛をふーっと吹いて遊んだ懐かしい記憶がよみがえる。見慣れたその花が、どこか落ち着かなかった私を安心させてくれた。4月下旬のある日、キャンパスの一角でたまたま、カントウタンポポの花を見つけた。日本固有種のカントウタンポポが自生しているのは、自然豊かな都留でも珍しいという。カントウタンポポとの出会いに驚いたと同時に、キャンパス内で貴重な体験ができたことに心がはずんだ。5月も終盤に差しかかったころ、道端のタンポポが綿毛になっているのを見つけた。風を受けて今にも飛び立とうとしている綿毛のすがたが、新しい環境ではじめの一歩を踏み出そうとしている今の自分と重なり、勇気づけられる。「一緒に頑張ろう」と心のなかで語りかけた。慣れない場所での新生活。不安な気持ちでいっぱいだった私を、タンポポが励ましてくれた。タンポポからのエールを胸に、一歩ずつ進んでいきたい。ふわふわとした綿毛が、「ひとりじゃないよ」と言ってくれているようだった。若槻温(比較文化学科1年)=文・写真凛と立つタンポポのすがたに思わず息をのむ(2024年5月18日)ができたことに心がはずんだ。都留のまち探検隊

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