118号hp用 圧縮
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11レジの棚には、梱包のさいに使われるスタンプが置いてある(2024年10月29日)味を毎回提供することだと教えてくれた。季節や年によって野菜の味は変わるため、ドレッシングの味を変えないようにすることは難しい。特に、冬の玉ねぎは苦みが出やすいそう。「そのときは、野菜と相談だよね」と小宮さんが笑いながら言う。freckleのドレッシングは、茶色のクッキングシートのようなものがビンの蓋にかぶせられ、麻のひもで留められている。そして、商品を入れる紙袋には、スタンプを押してくれる。市販のドレッシングにはない、かわいらしい梱包だ。何か工夫があるのだろうか。私が質問すると、「手間はかけたいよね」と言う。商品の梱包は流れ作業になりがちだ。そうではなく、一つひとつに想いを込めて、自分の手で商品を届けたいという小宮さんの気持ちが伝わってくる。体に優しいものを届けるどうして体に優しいドレッシングを作ろうと思ったのだろう。きっかけは、小宮さん自身が体調を崩したことだそうだ。自分の食生活を見直して、何か体に良いものを作りたいと考えたという。そこで、家庭の食卓でよく使われるドレッシングに目をつけた。市販のドレッシングには添加物が使われているため、無添加で体に優しいものを作り始めた。また、地元の野菜を使うのは、「産地が地元のものだと安心感もあるし、守られている感じがするから」と話す。食材にも小宮さんのこだわりが表れていた。以前、ホームページを見たさいに気になった「お母さんの味をお届けできるよう」という一文について聞いてみる。「毎日、家事や子育てに追われ、忙しい主婦のかたがたへ、調味料として何にでも合うものを提供したい」という意味を込めているそうだ。三人の子どもの母親である小宮さんならではの考えだ。このドレッシングがあれば、手軽に健康を意識したおいしい料理ができるのだ。小宮さんのドレッシングは、お母さんの手料理の味を思い出すような優しさを感じる。私は一人暮らしを始めてから、冷凍食品ばかりを食べていて、自分の体のことを意識できていなかった。しかし最近は、このドレッシングを使って、体を気づかった料理を作ることが多くなった。今では私にとって、料理に欠かせない最強のアイテムになりつつある。* * *「ここがお客さんにとって安心できる場所になればいい」と小宮さんはくり返す。その想いは、ドレッシングや店内の内装、梱包などに表れている。小宮さんと出会い、あたたかな気持ちに触れることができた。それは、私に生活を見直すきっかけを与えてくれた。小宮さんは、自分が関わるもの全てに大切なものを見るような眼差しを向けている。そんな彼女のように私も、まずは身近なものに対して、あたたかい気持ちを向けられるようになりたい。
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