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12no.118 Dec. 2024を推奨したことで栄えたそうだ。この建物は仁にしな科家という絹問屋の住宅だった。大正時代に建てられた貴重な建築物を活用するため、商家資料館として開館した。ひらけた間取の一階は、じっさいに商売が行われていたことを感じさせる。都留市の有形文化財に指定され、当時のようすを今に伝える貴重な建物だ。当時の繁栄を象徴するかのように、内装はとても豪華だ。海外からの輸入品で飾られた洋間からは、当時の交易をうかがい知ることができる。大正時代の輸入品はふだん目にすることが少なく、新鮮でドキドキした。「当時、海外ではこんなものが生産されていたのか」と、思いがけないところで海外の文化に触れることができ、嬉しかった。戸を開けると商家資料館に入ると、管理をされている小こばやししげお林重雄さん(74)と池いけうちげんいち内源一さん(81)が出迎えてくださった。入るとまず「甲かいき斐絹」と書かれた額が目に入る。重厚な雰囲気を放つ額が気になり尋ねると、かつて織物組合に掛けられていたものだと教えてくださった。池内さんが「織物のまちとしてのシンボルのようなものだ」と誇らしげに語るすがたから、昔のまちのようすが気になった。商家資料館を見学する谷村町で織物業が盛んになったのは江戸時代からだという。当時の城主秋元氏が織物業商家資料館職員の小林さんと池内さん。訪れるといつもあたたかく迎えてくださる(写真提供=ミュージアム都留)お二人によるとこの建物は、屋久杉の天井や黒くろがき柿の床柱など、材質にもこだわって建てられたそうだ。世界遺産に認定されている屋久島の屋久杉を使って建てられたなんて、今では考えられないことだ。関東大震災を経てもなお崩れることなく残っているのは、こだわって建てられたおかげかもしれない。商家資料館には、織物業に関わるものだけでなく、まちの人から寄贈された当時の調度品も展示されている。昔の姿見や手回し写映機など、写真では見たことがあったが、はじめて目にしたのでとてもワクワクした。ありし日々を伝える谷やむらまち村町駅から5分ほど歩くと、周囲の建物とは一風変わった土蔵造りの家が建っている。建物の前に立つ柱には「商家資料館」と書かれている。かつて都留市では織物業が盛んだった、と耳にしたことを思い出し、興味が湧いた。入っても大丈夫だろうか。恐るおそる戸を開けると、当時のおもかげを残す室内が広がっていた。
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