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13※郡内織とは郡内地方で織られる絹織物の総称で、かつては甲斐絹として親しまれた西田伊吹(国文学科1年︶=文・写真お二人の想い長年、都留市に住んでいるお二人は、都留市の織物業の繁栄と衰退を目の当たりにしてきたという。お二人が青年時代を過ごしたころは活気にあふれていたそうだ。当時、谷村町に3ヶ所もあった映画館での思い出話を楽しそうにしてくださった。お二人から語られる谷村町はとても賑やかで、できることならタイムスリップして見に行きたい。けれど、ときおり寂しそうな表情も見られた。「今はかつての繁栄を感じることが難しいけれど、たしかに谷村町は織物のまちだった。そのことを証明し続けるのが商家資料館だ」と池内さんは強くおっしゃる。小林さんは「寂しいと感じることもあるが、時代が進むのに伴ってまちのようすが変わるのは当然だ。けれど、今のまちのすがたがあるのも、かつてのまちがあったからだ」と語ってくださった。歴史を知れば、今の暮らしの原点も知ることができるのだ。商家資料館には、地元の小学生が社会科見学に来るそうだ。小林さんは、訪れた小学生に紹介するとき、じっさいに体験してもらうことを大切にしているという。黒電話やレコードプレイヤーなど、昔のものに触れてもらい、使いかたを教えているそうだ。「知るだけでなく、理解して吸収してもらいたい。しかし、そんな機会は少ない。だから自分が今の生活の原点を伝える役割を果たしたい」とおっしゃる。お話を聞いていると、小林さんが責任感を持って子どもたちと接していることが伝わってきた。***商家資料館を出て帰り道を歩いていると、クワの木を見つけた。お二人が「養蚕業も行われていた」とおっしゃっていたことを思い出す。織物業のおもかげを感じながらまちを歩くことができるのは、商家資料館が残され伝えてくれる人がいるからだと実感した。これからも時代が進むにつれ、このまちのすがたは変わっていくだろう。しかしどんなに時が流れても、昔のまちのすがたはかつてのまま、歴史のなかに残り続ける。お二人は谷村町の歴史をたどりながら、今の暮らしの根底を伝えてくださっているのだ。①②谷村町でじっさいに織られた絹織物③郡内織(※)の着物。裏地に柄が施されている④戸を開くと正面に掛けられている額①④③②
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