118号hp用 圧縮
14/52

14no.118 Dec. 2024作家さんと心が通じるのだとか。作家さんは、個人で民芸品を作っている人もいれば、有名な工房で作っている人もいる。必ず「これ」という仕入れの流れはなく、作家さんそれぞれに応じた方法を考え、商品を集めているらしい。いづみさんは容子さんの仕入れに幼いころからついて行っていたそう。「家族旅行が仕入れだった」という。仕入れ先で気に入った民芸品を見つけると、お小遣いで買っていたそうだ。いづみさんは「選んだ物の種類や色などに共通点はなかった」と話す。買った物のなかで、お酒を飲むことに使う「ぐい呑み」を特に気に入っていたという。「お酒も飲めないのに渋いでしょ」と笑う。いづみさんはおもちゃと同じような感覚で民芸品を集めていた。お二人にとって民芸品はただの商品ではなく、思い出が重なった大切な物なのだ。こだわりを詰めこんで「うちのお店では種類別に分けて並べることもあれば、作家さんの個性が出るように同じ作家さんの作品をまとめて置くことがあるの」と容子さんがおっしゃる。商品を買う私たちは作家さんの内面や、どのように商品を作ってい家族旅行が仕入れ店内には、民芸品が木製の棚いっぱいに並んでいる。商品の横にあるポップには、焼き物の名前と一緒に、作家さんの名前や、民芸品が作られた場所が書かれている。全国各地の民芸品が集まるこのお店は、どうやって仕入れをするのだろう。容子さんは、民芸品は現地で仕入れるものだという。今はネットで仕入れることもできるが、じっさいに現地を訪れ現物を見ることで、るのかを知らない。私たちが少しでも作家さんを知れるように配置を考えているようだ。さらに、内装で特に大事にしているのが季節感だという。たしかに、夏に来たときには入口の正面にはグラスが置いてあったが、肌寒くなった今は暖色の陶器が置いてある。「夏にはガラス製品を目立つように置いたり、冬には、あたたかさを感じる陶器を置いたりしているの。そのほうが、お客さんの目にとまりやすい」といづみさんがおっしゃる。容子さんは「来てくれた人がお店で民芸品に触れて地方を感じ、小旅行をしているような気分になってほしい」と並べられた民芸品を見ながら話す。旅行は気軽に行けるものではない。そのぶん、このお店で少しでも旅行気分を味わってほしいそう。定期的に配置や商品が入れ替わる店内は、容子さんといづみさんのこだわりが詰めこまれている。お店に来るたびに違うところを探してみるのもおもしろそうだ。リラックスできる空間容子さんが、福島県出身である本学の卒業生の話をしてくださる。学生時代は、何度も「工芸たけだ」は現店主の市いちかわ川容ようこ子さん(69)と中なかの野いづみさん(40)が親子で営んでいる民芸品店だ。友人への贈り物を選びにお店に訪れたとき、祖母の家のような雰囲気に安心した。どうしてこんなにほっとするか気になり、もう一度お二人のもとへ訪れた。憩いの場ここは、

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る