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17始まらない。人生は長いから、せっかくなら自分のやりたいことをしたかった」とおっしゃった。変わっているよね、と風間さんは笑う。だが、自分の気持ちに素直になって行動することは、簡単ではないだろう。風間さんのおっしゃる「変わっている」生きかたをするのは、とてもかっこいい。楽しむことで風間さんは毎朝、車で笛ふえ吹ふき市から都留に通っている。早朝5時30分から1時間ほど仕込みをし、開店する。お店を始めた当初は慣れないことも多く、夜12時に帰宅して、早朝の3時には起きるという生活をしていたという。風間さんがそうした大変な状況を乗り越えられたのは、真面目に仕事をすれば売り上げにつながったことや、お客さんとの会話が楽しかったことが理由だという。自分で始めたことだったから、大変なのは当たり前で、特別なことだとも思わなかったと風間さんはおっしゃった。私だったら、自分が始めたことであっても、つい弱音を吐いてしまうだろう。風間さんが大変な状況を乗り越えられたのは、お店の仕事が好きで、心から楽しんでいるからなのだろう。お客さんの笑顔のためにおにぎりの具や、お店で売っているお惣菜はすべて風間さんの手作りだ。10種類のおにぎりに加えて、日替わりメニューも用意している。梅や昆布、辛子明太子などの定番の具から、卵黄の醤油漬けや鮭マヨ柚子胡椒といった、珍しい具のおにぎりもある。お米は山梨県産の特別栽培米を選んでいる。特別栽培米とは、農薬の使用率を通常の半分以下に抑えたお米のことだ。健康に配慮したいという風間さんのこだわりが現れている。お米の品種はコシヒカリで、冷たくてもおいしく食べられる。昼におにぎりを買って夜に食べるお客さんにも優しい。具はたくさん入れることを意識しているという。お店を始める前、市販のおにぎりを食べたところ、具が少ないと感じたことがあったからだそうだ。お客さんからも、「具がおにぎりの上に乗っているだけじゃなく、なかにも入っていて嬉しい」と言われたことがあるという。お客さんは2、3割が学生で、いちばん多いのは主婦層だ。子どもの部活動用のごはんとして持たせたり、差し入れに買っていったりするらしい。週末には、同じスポーツクラブのユニフォームを着た親子が続けて来店することがあるという。口コミで広まっているのかもしれない、と風間さんは考えている。「良くも悪くも明太マヨクリームチーズ(左)と鮭マヨ柚子胡椒(右)を購入した。お米の甘みと具の塩気がよく合う(2024年11月24日)口コミは広まりやすいけど、自信があったから、不安はなかったね」とおっしゃった。その自信は、甲府市のお店で培った経験から生まれたそうだ。お客さんにおにぎりの味を褒めてもらえたことや、接客のノウハウを学べたことが、自信へとつながったのだという。「自分の作ったものが売れることが嬉しかった。そろえていた材料がどんどん減っていって、それでお客さんのお腹を満たせているということにやりがいを感じた」と風間さんはおっしゃった。続けて、「商売が好きなんだよね。でも自
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