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24富士急行線の路線図に、「十とおかいちば日市場」という私にとって馴染みのない地名を見つけた。﹃都留市地名事典﹄で調べてみると、江戸時代以降、毎月十日に市が開かれていたことに由来するそうだ。地名だけではないほかの魅力も見つけたい。十日市場を歩いて観察してみる。溶岩流の跡地9月5日、澄んだ青空に気持ちが晴れる。都留文科大学前駅から電車に乗ると、3分ほどで十日市場駅に着いた。駅を出て急な坂を下ると住宅街だ。坂道がいたるところにある。﹃十日市場小誌﹄によると、十日市場は富士山の溶岩流が流れた地域であるそうだ。坂の数が多いのも溶岩流が流れたからなのだろう。そのように意識しながら歩くと、民家の石垣や神社の石段にも溶岩石が使われていることに気づいた。国道139号線の近くにある小おささ篠神社に寄ってみると、9月7日に催される小篠明みょうじん神の祭りの装飾が施されていた。神社へと続く石段には提灯が吊るされ、境内には御おみこし神輿が設置されている。そういえば、駅近くの民家にはしめ44縄が張られ、住宅街には大きなのぼりが立っていた。お祭りの装飾だったのか。十日市場地区全体がお祭り一色になっているようだ。めったに見られないようすを見ることができて心が踊る。お祭りの雰囲気に後押しされるように歩いていると、多くの民家の玄関に三角形のクッションのようなものが飾られていることに気づく。大学周辺の住宅街では見かけたことがない。十日市場に根付く独特の文化なのだろうか。疑問を抱えながらも、境内に湧き水があり、水すいげんざん源山という山号をもつ永えいじゅいん寿院に向かうことにした。富士山の湧水十日市場では、富士山噴火によってできた火成岩に富士山の水などが染み込み、湧水となって地表に流れ出ている。年間を通して一定の水温であり、冬の時期には水かけ菜という青菜の栽培が盛んだ。なかでも永寿院にある湧水は、平成の名水百選に選ばれており、全国4位の水質を誇るそうだ。そうした溶岩の断層から湧き出る水によって、本堂の近くにある池はできている。湧水が滝のように流れ出るようすに見惚れていると、住職のお母さまである水みずにわはつえ庭初枝さんが話しかけてくださった。十日市場のを探る魅力②①①『ひいち』の飾り。山梨県忍おしの野村でも、『ひいち』の風習が色濃く残っている②永寿院の入り口にあるお地蔵さま。富士山噴火の犠牲者を悼むために作られたという
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