118号hp用 圧縮
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34no.118 Dec. 2024お店は国道139号線に面している。18時まで営業している(水・木曜日定休)。明かりに照らされたのれん444が風情あるたたずまいだ印南響(比較文化学科2年)=文・写真「せんべいの泉屋」を知ったのは、アパートの大家さんにおせんべいをいただいたことがきっかけだった。都留では馴染み深い、本学や富士山の絵が表面に型押しされていることに驚く。噛むとかたく、口のなかにさわやかな山さんしょう椒の風味が広がる。はじめて食べた山椒風味のおせんべいに惹かれ、お店を訪れた。おせんべい作りと道具お話をうかがったのは、2代目の伊いとうしげこ藤茂子さんと、娘さんである3代目の渡わたなべあやこ辺綾子さんだ。創業から70年以上続く「せんべいの泉屋」で作っているのは、山椒風味の木きの実せんべい、みそせんべい、ピーナッツ味のこおし444せんべいの3種類だ。木の実せんべいには厚さが3種類あり、それぞれ違うかたさが楽しめる。おせんべいをどのように作っているのか気になって尋ねると、おせんべい作りに使う道具をいくつか見せてくださる。おせんべいの種(ホットケーキミックスのようなどろどろとした生地)を入れるのは、木製の桶だ。綾子さんが両手で抱えて持ってきたので、その大きさに目を丸くする。現在は作っている職人さんが少ないため、新調するときには探すのに苦労したそうだ。水分を適度に保ってくれるなどの性質がある、木製がこだわりだ。種をすくうのは、お二人が「おさじ」と呼ぶスプーンだ。初代である綾子さんのおじいさんの手作りだという。お皿の片側だけ丸みがなくなっているのは、種をすくうたびに桶にこすれるからだそう。桶に入れた材料を手でこねて種を作り、おさじでひとかきずつすくう。そして、型に入れて焼く作業をくり返して、泉屋のおせんべいは焼き上がる。忍耐力と集中力が試されそうな、地道な作業だ。木の実せんべいのなかで一番かたい「厚焼甲州せんべい」の型を見せていただく。黒いはさみのような形で、刃の代わりに両方の先端が円盤のようになっている。片方の円盤に彫ってあるのは、猿さるはし橋や舞まいづるじょう鶴城、甲州ぶどうなどの山梨の名物だ。10種類もある絵柄は、初代であるおじいさんが通った学校の先生が描いてくれた。よく見ると、柄の一部が平たくなってい憶残記に味る

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