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38no.118 Dec. 2024秋の花さがし左:タマアジサイのつぼみ(2024年9月8日)右上:開花したようす。中央のうす紫の部分が花だ(2024年8月29日)右下:花の時期を終えたようす(2024年9月8日)自然豊かな都留に来てから、周りの草木の移ろいを見て、季節を感じることが多くなった。春はキャンパス内や道端でたくさん花を見かけたけれど、夏が過ぎるころにはほとんど目にしなくなった。秋に咲く花はないのだろうか。あるとしたらどんな花だろう。厳しい暑さが和らぎ、外を歩きやすい季節になったので、本学の周辺を探してみることにした。山のアジサイ8月下旬、本学の自然科学棟沿いの道路を歩いてみる。台風が近づいているため雨の予報だったが、なんとか降らずにいてくれてほっとする。涼しさを感じながら歩いていると、楽らくやま山公園の入口近くにたどり着く。道路とうら山を仕切る石塀を越えて、植物が垂れ下がっている。そのなかに、うす紫の花をたくさん咲かせた枝を見つけた。タマアジサイという野生のアジサイだ。中心に小さな花が集まって、周りに装飾花が散らばるようについている。つぼみは手のひらサイズだ。がく44が何重にも覆われて、玉のように丸まっている。このつぼみの形がタマアジサイの名称の由来だという。ちょうど今が花盛りのタマアジサイは、装飾花の白と、花のうす紫の色合いが美しい。ふだん見るアジサイは園芸用で、装飾花のみからなる。しかし、もともと野生のアジサイの装飾花は、タマアジサイのようにまばらについているという。今まで私が見てきたのは、装飾花のみのアジサイだったようだ。花と装飾花の違いもわかっていなかったので、はじめて知るアジサイのすがたに驚く。9月になり、ふたたびタマアジサイに会いに行く。石塀に近づいて見てみると、うす紫の花は濃い緑に変わっていた。装飾花は白からうすい緑になっている。どうやら花の時期は終わってしまったようだ。淡い紫の花が見られないと思うと、少し寂しくなる。しかし、しおれることなく形はしっかり残っているから、枯れているようには見えない。色の変わった花や装飾花もきれいで、もとから緑だと言われても納得してしまいそうだ。今まで色あせた花を前向きに捉えられたことはなかった。タマアジサイは、どんなすがたでも私を惹きつける。自分の足で歩いて見つけられたことが嬉しかった。クサギを訪ねてうら山を歩いていて、もうひとつ見つけた花がある。8月下旬、建設中の本学の新棟に近い道路で、白い花をつけた木を目にする。クサギだ。花だけでなく、赤紫のがく44に包まれた実もたくさんなっている。秋に花を咲かせる植物は、冬が来る前に種を残さなければならない。そのため、短期間で花から実へと移り変わ
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