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41座談会のようす。お茶やお菓子とともに、雑談を楽しんだ(2024年10月7日)ると、山崎さんは「どちらも20年近くやってるよ」と答えてくださった。早朝から参拝していた檀だんか家さんの提案で始まったそうで、一番長いかたは12年も参加しているという。ならば、参加者のかたは全員檀家さんなのだろうと思ったが、意外なことに今では檀家さんはひとりもいないそうだ。「親族が普門寺に縁があって」「早朝参禅会の掲示を見て興味本位で」。参禅会がなければ出会えなかった人たちが集まっていることに縁を感じる。参加し続けるわけ参禅会の開始時刻は、4月から9月までは朝5時30分から、10月から3月までは6時からだ。早起きが苦手な私にとっては起きやすい時間ではない。みなさんが参加し続ける理由はなんだろう。尋ねてみると、「朝の涼しい風だったり、ほの暗い空だったりがとても好き。だからこの時間がいい」とひとりが答えてくれた。続けてほかのかたも「参加料がなくて、自由に休んでいいし、宗派が違ってもいい。そんなゆるさが魅力なの」と話してくれる。普門寺の参禅会での唯一の掟は、同じ空気を吸っていると感じることだ。コロナ禍以前は留学生も、年に数回坐禅を組んだそう。宗派や国籍が違ってもいいのだ。さらに、この参禅会は人との新たな出会いをもたらす。参禅会を通じて知り合い、そのあと参加しなくなってもお互いに連絡を取り続ける人もいるという。「近すぎない距離感の人たちだからこそ何でも話せる」と山崎さんが話してくださった。年齢も職業もきっかけも違う人たちが参加できる会だからこそ、参禅会は人と人がつながれる場所なのだ。参禅会だけではなく、この座談会も魅力にあふれている。「みなさんと話せることが楽しみ」とお茶を手に参加者のかたは話してくれる。その言葉に続けて、「お茶を飲みながら相談事があれば相談してくれたらいい。解決することはできないけど、聞くことならできるから」と山崎さんは言ってくれた。周りの参加者のかたもうなずく。気さくな山崎さんやほかの参加者のかたの人柄も、参加し続けたいと思わせる理由なのだろう。* * *帰りぎわ、山崎さんと参加者のかたから「来たかったらまた来てね」という言葉をいただいた。重荷にならない優しい言葉に、つい嬉しくなって「はい」と大きな声で返事をする。本堂の外へ出ていくと、来たときの暗さとは打ってかわって、空が明るくなっている。まだ朝の7時だ。坐禅から始まった一日は長い。これから何をしようかとわくわくする。ふと、「この時間がいい」と話していたかたの笑顔が頭に浮かぶ。今ならその言葉の意味がよくわかる。家と大学を行き来するような生活のなかに、もうひとつの居場所ができたようで嬉しい。またここに来よう。心にそう決めて、普門寺をあとにした。
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