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込められた願いお話を聞かせてくださったのは、都留ロータリークラブ前会長である花はなだきよえ田聖恵さんだ。都留ロータリークラブは、地域奉仕を目的とする団体である。花田さんは河童の石像が建てられた当時のことをよく知っているという。石像が建てられたのは今から18年ほど前のことだ。河童の石像が建っている長安寺の付近にはお寺が多い。そこで、参詣途中のかたのために、石造の小さな椅子が設置された。その隣には、そばを流れる寺川から水を引いて、小さな池を作った。そして長安寺の前には、コイがゆったりと泳ぐようすを座って眺めることができる休憩スペースが完成したそう。しかし、だんだんそのスペースにゴミが捨てられるようになった。それによって、寺川は汚れていき、コイが住めるような環境ではなくなってしまったのだ。そこで、当時の市長から都留ロータリークラブへ、「寺川の環境を保全しよう」という啓発を目的とした石像を建ててほしいと依頼があったという。都留ロータリークラブへ地域奉仕の協力が仰がれることはたくさんある、と花田さんは語る。その表情は誇らしげだった。なぜモチーフに河童を選んだのかとたずねると、「川には河童が似合うでしょう」と言う。私が考えていたよりもシンプルな理由だったことに驚いた。文教のまち都留石像の構図についてもお話を聞いた。二匹の河童は親子であり、河童の親が子どもに本の読み聞かせをしている場面を表現しているらしい。長安寺の近くには青せいらん藍幼稚園や谷やむら村第一小学校、都留市立図書館などがあり、ほほえましい親子のすがたを見かけることが多いそうだ。河童の石像には、地域社会の平和を願い、文教のまちである都留をいつまでも守っていこうという想いも込められているのだ。花田さんにお話を聞いて、現在の寺川のようすを見てみようと、ふたたび河童の石像のもとに向かった。現在の寺川は河童の石像のおかげか、昔に比べてポイ捨ても減り、清流がよどむことなく流れている。住宅のあいだを流れ続ける寺川は、昔から都留の治水や利水の役割を担っている。近隣の住民のかたがたの生活にとって、なくてはならない重要な川だ。***河童の石像とはじめて出会ったときには、かれらが何を見つめているのか想像できなかった。調べていくにつれて、かれらが寺川の環境保全や、まちの見守りなど、たくさんの想いを託されて、都留の未来を見据えていることを知った。ふだん生活しているだけでは見過ごされてしまいがちなことのなかにも、思いがけない発見やストーリーが隠れている。何気ないものに目を向けることで、視野が広がるということを、かれらが教えてくれた。現在の寺川のようす。流れ続ける水は、地域の人びとの暮らしをささえている(2024年10月28日)47
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