フィールド・ノート No67
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FIELD.NOTE18 手探りの状態から始まったカゴづくり。はじめは蔓との格闘でした。 ぐねぐねと曲がる蔓をむりやり編み込んでいくには相当な力が必要です。編み目から外れた蔓が跳ね上り、勢いよく顔に当たることも。つくっているあいだはとにかく必死。蔓を活かすなどと考える余裕はありませんでした。およそ3時間かけて、ハサミが入るくらいのカゴができました。見た目は良くありませんが、それでも案外かたちになるものだとしみじみ思います。それはなぜかと考えると、蔓の微妙な色の移り変わりや、その細かなしわ33やしなり333、そこから感じ取れる立体的な質感などが、カゴに「動き」を与えているからだと思います。面白みのあるカゴに見えるよう蔓が助けてくれている、といった印象です。たとえカゴの形が良くなくても、思わずじっと見てしまうのです。つくりたいカゴの大きさにもよりますが、カゴ一つつくるのには意外とたくさんの蔓が必要です。山へ足を運ぶことを重ねていくと、「あの蔓の太さはカゴづくりにちょうどいいなぁ」と、その出来上がりを想像しながら蔓を材として見ていることに気づきます。つくり手の眼で蔓を見つめ、材として最適なものを探し出す楽しみがありました。 その後も山から蔓を採るたびに2つ目、3つ目とつくっていきました。しなりが強すぎる蔓は、編み込んでいくというより引っかけていくという視点が大切だということ、蔓のざらざらとした表面がちょうど良い滑り止めとなって、編み込んでいくのにそれほど力は必要がないことなどに気づいていきます。つくっていくうちにこだわりがでてきて、うまくいかないなぁ、と思うことばかりです。それでも最初の不安はどこへやら。蔓という材との上手な付き合いかたが、少しずつ分かってきたのです。蔓採りに出かけるときは、その土地や山をどなたが所有しているか確認しておきましょう。許可をきちんとをもらってから出かけたほうが、より楽しい蔓採りになるはずです。  材としての蔓を考える。※

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