フィールド・ノート No67
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FIELD.NOTE22高尾町の商店街を歩いていたとき、以前本誌22号で取り上げていた「藍と器」に寄りました。何度もこのお店の前を通ったことがあって気になっていたのです。出てきたのは羽はだ田綾あやめ女さん(63)。 気がつくと、綾女さんの子供時代の話になっています。綾女さんも小さいころに「したはけ」(本誌66号参照)に遊びに行っていたこと、水着がなかったので毛糸で水着をつくってもらったこと、隣りの映画館から聞こえてくる音を子守唄のように聞いて子ども時代を送ったという話も聞かせていただきました。谷村で子ども時代を過ごしたかたで、この年代の女性にお話を聞くのは初めてだったので、ついつい聞き入ってしまいました。私が『フィールド・ノート』の編集に携わるようになって6年のあいだ、都留のあちこちを歩いてお話を聞き、それを綴る、ということを繰り返してきました。その過程で、さまざまなかたとの交流の輪が広がっていくという確かな手応えを得ることもできました。8年のあいだに、お話を聞かせてもらったかたのなかには亡くなられたり、お店を閉じられたりしたかたもいらっしゃいます。変わりゆくなかで、変わらない、都留での日々をもう少し書き留めていけたらと思います。              (桜井明子)都留での人の営みを書き留めていくこと現在の「藍と器」(10.12.01)『フィールド・ノート』編集部=文・写真8周年を迎えて考える、『フィールド・ノート』を続けるたのしさ。続けていないと見えないものがあるのです。

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