フィールド・ノート No67
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FIELD.NOTE36大月からの登り道 ││市太佐知今回歩いた道は、ほとんどが山のあいだをぬう坂道だ。私の出身地は、おむすび型の小さな山がポツン、ポツンとあるばかりの平坦なところ。そのせいか、今回の道を目の前にしたとき、坂の多さと急さにたじろいだ。大月から新笹子トンネルに至るまでの登り坂は、途切れることなく続く。以前、私が地元の平坦な道と同じように自転車を漕ごうとして、目的地に向かうことをあきらめた坂道だ。足を動かさないと目的地には近づかないと自分たちを奮い立たせて進む。進路が隠れるほど曲がりくねった道。まだ周囲が暗かったこともかさなって、振り返っても、歩いてきた道を頭に浮かべることができない。しだいに背後から朝日が差し込み、少し周辺の景色が見えるようになってきた。すると自分たちの歩いている坂がどのように登り曲がっているのかが分かってきた。地図で見ていた平面的な現在地が、頭のなかで立体的にイメージできる。長距離を歩いてきたからこそ掴めた感覚だった。Tsuru出発!12深夜の都留文科大学前駅を出発した。夜の大月。橋の上から撮影。並んだ街灯が不思議な光景に映る。12Otsuki山梨をゆく2010年9月11日、都留を出発して、市川三郷町を目指しました。道の途中ではありますが甲府市まで歩き抜きました。ことのはじまりは、香川県出身・市太の一言でした。「都留から甲府まで行こうとしたんだ。でも途中で断念したから、いつかリベンジを果たしたい」。山梨県にある市川三郷町の出身の石川は、都留から実家までの距離を自動車で通ったことはあったけれど、歩いたことはありませんでした。せっかくだから、2人で甲府よりも向こう側にある石川家を目的にしてみよう。出身の違う2人が、山の連なる山梨県を歩きました。石川あすか(社会学科3年)=文・写真市太佐知(国文学科3年)=文長さ2,953mの新笹子トンネルに挑む。12Sasago

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