フィールド・ノート68号
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27  今日も、芦沢さんは山で木を切ってきた。このごろは、木を切ると鳥が寄ってくるという。暖かくなってきたので、木を倒した振動で落ち葉の下から虫がでてくる。それを狙って、鳥が食べにくるのではないかとのこと。暗い林では鳥はこないという。虫がいないのだろうか。たずねると、暗いところでは鳥は虫が見えないのではないかとのこと。 なるほど。そんなふうに、今日の山のことを話す芦沢さんは、なんだかいきいきとしていて、楽しそうだ。たとえば木を切る仕事のおもしろさはなんですか、とたずねても、芦沢さんから積極的な答えは返ってこない。けれど、今日一日の山のことをたずねれば、きっと、いろいろな言葉が返ってくるような気がした。  あらためて椅子に座ってみる。丸太の粗削りさ、予想外の座り心地のよさ。淡々とした芦沢さんの姿勢はそのまま、芦沢さんのつくるその椅子に表れているようだった。昨年、お祭りでの出店にむけ丸太を加工し(下写真)、できあがった作品たち。手前が椅子、その上に乗っているのがシーソー。左手には彫刻が並ぶ

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