フィールド・ノート68号
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FIELD.NOTE38ねこばすと出会う 1月29日。待ち合わせ場所に来てくださったのは、神奈川県横浜市にお住まいの櫻さくらい井幸さちえ恵さん(27)とご主人の洋ようすけ輔さん(27)。個人的にブログでね﹅﹅﹅﹅こばすの情報発信をし、支援を募りつつ活動をしているという。 車で案内してもらうこと5分。都留市小野にある山を登り、中腹地点に行くとひとけがない空き地に出た。そこに車を止める。ここが目的地のようだ。しかし、あるのは古びた廃バスが2台だけ。これがね﹅﹅﹅﹅こばす? そう思っているとバス付近で4匹のネコを目撃。じつは、幸恵さんのお話によると、ここを見つけるまえ、廃バスは4台あったそうだ。でも、そのうち2台の廃バスにはノネコ(山野にすむネコ)が住すみか処としていたためか撤去せずに、そのままにしてあったらしい。なるほど、ネコがいるバスだから「ねこばす」。幸恵さんたちがバスを見つけたのは去年の春まえ。知人からこの場所を教えてもらったのがきっかけだという。「本当にバスのなかが悲惨な状況で……もともと毛布とか置いてあったみたいなんだけど、そこに染みついたネコ「大学の裏のほうにねこばすがあるんだって」。そう友人から聞いたのは去年の6月のころだった。「ねこばす」と呼ばれている存在がどこかにある。その正体不明の存在をつきとめたい。そう思い続けて半年。ついにねこばすに携わっている方がいるという情報を入手。さっそく連絡をし、案内をしてもらうことに。はたして「ねこばす」の真相とは……?  前澤志依(国文学科1年)=文・写真の体臭や、糞尿の匂いがすごくてね。むせかえっちゃって、そこには居られなかった」あんな状況は二度と見たくない、と幸恵さんはさらに付け足す。きっと、行く当てもないからとりあえずこのバスを拠点にして、生活をしているノネコが多くいるのかもしれない。 なかに足を踏み入れる。座席や窓はそのままで、アクセルを踏めば今にも発進しそうだ。不自由がない、広々とした空間。私がネコだったら、快適にすごせそうだなとバスのなかをぐるりと見回しながら思う。人里から離れたところにひっそりとバスがあるから、ノネコたちものびのびと生活をしている。まるで、ネコの秘密基地みたいな不思議な場所だ。 市役所の了承を得て、今は幸恵さんたちがおもにね﹅﹅﹅﹅こばすのノネコの面倒をみている。「今まではかわいそうと思っていただけだったけど、バスのなかで共食いされている子ネコをみつけて。衝撃的な状況があると知りながら、見て見ぬふりはできなかった」と幸恵さん。週2、3回洋輔さんの仕事がお休みのときに片道2時間かけて通い、エサやりとバスの掃除をする。通うのは大変ではないのかと尋ねると「山中湖までよくドライブネコがいるバス

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