フィールド・ノート68号
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39に来てたんで、横浜から都留は近く感じますね。でも、ネコの命がそこ(ねこばす)にあるのに、体調が悪いから行けない、なんてこっちの都合で行けないっていうことはないようにしてます」とのこと。そして、これ以上ノネコを増やさないためにもね﹅﹅﹅﹅こばすに住むノネコたちの不妊手術もしている。去年は5匹の子ネコを保護し、内3匹は今も幸恵さんたちが家で面倒をみながら、里親を探しているという。結果、以前は30匹以上いたノネコが、今は20匹ほどになったらしい。「ねこばす」の背景には、人がネコにどうやってかかわっていけばいいのか考えている人がいる。そのことを想像していなかった私は、始終驚いてばかりだった。 幸恵さんたちに、これからどうしていきたいのかを尋ねると「ね﹅﹅﹅﹅こばすのネコたちを最後まで見守りたいな」とおっしゃっていた。今いるね﹅﹅﹅﹅こばすのノネコが寿命をむかえて、いなくなったとき、今ある2台の廃バスも撤去してもらえるように市役所にお願いしたいと考えているらしい。これ以上バスにネコが住みつかないために、だ。ねこばすの存在 取材に行ったあと、私は、ネコのことにたいして今どのように考えられているのかが気になって調べてみた。すると、2008年には27万頭のイヌ・ネコが殺処分になったという(2011年2月16日 朝日新聞より)。ノネコが集まり、糞尿の被害で周囲の人が困ってしまうという記事もネットで見た。きっと、仮に、かわいそうだからという理由でむやみにエサをあげ、保護をすればいいという問題でもないのだろう。知らなかった情報が私のなかに飛び込んでくる。もしかしたら、都留でも糞尿などの被害で困っている人たちがいるのかもしれない。取材に行くまえはネコのことを深く考えたことがなかった。大学周辺にもたくさんのネコがいるが、ネコを見かけても「あ、ネコだ」と思うだけで、それ以上のことを考えたことがあまりない。 そんななか、ね﹅﹅﹅﹅こばすと出会い、目で見て、体で感じた。そうすることで、今のノネコたちの現状の一部分を見ることができたし、身近な問題のひとつとして考えている人が多くいることを知った。今は私がネコとどうかかわっていけばいいのかを考えてみても、なかなか答えが見つからない。でもね﹅﹅﹅﹅こばすは私にとって、身近な問題にもっと目を向けたいと思うきっかけになった。私が普段気にとめていない物事にたいして、これからどうすればいいのかと考えている人たちが多くいる。私自身は、それにもどう受け止めていけばいいのだろう。今回の取材をきっかけに、視野を広げながら身近なところではなにが起こっているのかを、ゆっくりとじっくりと見て考えていこう。 最初は、正体を知りたい、という好奇心から「ねこばす」を探し求めた。でも、ね﹅﹅﹅﹅こばすはネコの秘密基地というだけでなく、じつは身近に生きるネコの問題を抱えた象徴として存在していたと私は思う。 「身近な問題を見落としていないか」山のなかにひっそりとあるバスは私にそう問いかけてきているようだった。1.バスの外見2.運転席でくつろいでいるノネコ3.2台のバス4.バスのなか。座席には寒さ対策で段ボールや毛布がなどが置かれている。ネコ用のトイレとエサ場のスペースもある 124 3

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