フィールド・ノート68号
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FIELD.NOTE40先生訪大澤かおり(社会学科2年)=文・写真第2回 自然塾の番長先生をめぐる都留の旅。今回の先生は、「宝の山ふれあいの里ネイチャーセンター」の学芸員である佐さとう藤洋ひろしさん(36)。みずからを「番長」と名乗り、ネイチャーセンターを訪れる人にいろいろな体験を通して自然とのふれあい方を伝えている。過去に何度か寄稿をしてくださるなど、本誌との関わりも深い。1月29日、佐藤さんが携わる活動の一つである「自然塾」に招いていただいた。 自転車を押しながら雪の残る長い坂道をのぼっていき、ようやくネイチャーセンターにたどり着く。大学から2時間ほどの道のりだった。時刻は午前9時。そこには、防寒着に身を包んだ子どもたちの姿が。送迎の車から飛び出した子どもがまず最初に駆け寄るのは佐藤さんのところだ。「番長、おはよう」子どもたちは口ぐちに挨拶をして佐藤さんを取り囲む。ちょっと強面の佐藤さん。けれどそれを意識させないほど、子どもたちに向ける笑顔は明るい。 この自然塾は、都留市の社会教育事業の一つで、市内の小学4年生から中学3年生を対象として、一年を通して自然のなかで体験をするというものだ。今年で13年目を迎えるが、いまだ人が途切れることはなく、定員を大幅に超える希望者が集まるという。 子どもたちは散りぢりになって好きなことをやり始める。焚き火の周りにいる子や、山へ走っていく子。犬と遊ぶ子もいれば、遊具で遊ぶ子もいる。皆、てんでばらばらだ。佐藤さんに今日の予定を尋ねると「未定です」と力強く言われてしまった。一から十まで決められたなかで活動をおこなうのではつまらない、というのが自然塾を始めた当初からの佐藤さんの姿勢だ。これをやってはいけない、というルールもこの自然塾にはない。「外から見るとまとまりがないと思います。じっさい、ケンカもするしものも壊れるし、怪我もする。でも、そういったときのリスク・マネジメントもきちんとするっていうのは徹底してます」薪割り体験 午後になると薪割りをした。まずは佐藤さんが材木の1つを目の前に置いて、斧を振り下ろす。男の子たちは佐藤さんが軽々と材木を割っていくのを見て、我も我もと斧を手に取る。けれど、いくら斧を振り下ろしても佐藤さんのようには割れないのだ。私も挑戦してみたものの、材木の表面に傷が増えていくだけでなかなか上手くいかない。「足を横に開いて、真上から力がかかるように振り下ろすんだよ」 佐藤さんの言葉を受けてできるかぎりその通りにしてみる。斧が木目の間にすとんと収まるように、きれいに割れた。これは気持ちいい。 そのうちに1人、2人とコツを掴んでいく。

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