フィールド・ノート68号
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7山梨県に来て、今年の4月で10年になります。都留市で鳥を見るようになったのは、2001年7月からです。場所は都留市十日市場の中屋敷フィールド。中屋敷フィールドで見た鳥を記録している野帳を開くと、2001年7月21日から始まっていて、「キセキレイ、ハシボソガラス、トビ、ヒヨドリ、イワツバメ」の5種が記されていました。 都留市の鳥に関わるようになった最初の場所が中屋敷フィールドでしたので、その後、全国のいろんな場所で鳥を見てきていますが、いつも「中屋敷フィールド」を基準に考えてきました。ですから、どこに行っても中屋敷フィールドと比較してしまいます。それは、自分の住んでいる場所の周辺に生息する鳥に一番興味があるからです。 さて、中屋敷フィールドで出会った最初の鳥はキセキレイでした(右頁写真)。僕にとってキセキレイは、小さいころから見慣れている鳥のひとつです。キセキレイに対して特別な想いはありませんが、それを見た中屋敷フィールドが自分にとっての原点だと思います。最初に出会った鳥は、その場所を知るきっかけにすぎませんが、中屋敷フィールドを知るための大切な生きものであることには変わりません。キセキレイのいた川、その上空を飛ぶイワツバメやトビ、スギの木から聞こえるヒヨドリの声。そこにいる鳥を通して、中屋敷フィールドのさまざまな顔を見てきました。見たものから、いろんな関心が生まれてきます。約10年のあいだに中屋敷フィールドの植生は大きく変わりました。少なかったササ類が増え、ススキの草原はかなり減りました。オニグルミやクワはずいぶんと大きくなり、イノシシの掘り跡でホオジロ類が採食している場面を見たときは、異種間の関係に惹かれました。イノシシが土を掘った場所が、ホオジロ類の好む採食地を生み出していたからです。 フィールドは、定期的に足を運ぶ場所です。自分のフィールドを持つことで見えてくるもの。僕の場合は、中屋敷フィールドとほかの地域を比較しながら、共通することや違うところに注目してきました。フィールドを持ち、それを介して世界を見てきたと言えるでしょう。それは、自分の関心と向き合うことでもありました。初夏、観察小屋の裏山は、このような新緑に彩られるフィールドを流れる川。カワガラスやセキレイ類が見られる

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