フィールドノート69号
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都留市田原の国道沿いに『元祖珍名菓子新しんあつやきき厚焼木の実みせんべい』と書かれた看板がある。このおせんべい屋さんをご存じだろうか。おせんべいのみを販売しているお店というのがなんだか珍しい気がして、訪ねてみることにした。おせんべいを口に運んで、うむむ、とうなりたくなる。前歯では噛み砕くことができない。奥歯の方へもっていき、手でもっている方に上向きの力が加わるようにして……そこでようやくおせんべいを口のなかへと入れることができた。口に広がる山椒の風味と歯ごたえを楽しみながら、そのかたさに驚く。この厚いおせんべいをつくっているのが、泉屋さんだ。茶色い布地に白い文字で大きく『せんべい』と書かれた暖のれん簾をくぐってお店に入る。茶色やベージュを基調とした落ち着いた雰囲気の店内はおせんべいと同じ山椒の匂いが広がっており、ガラスケースのなかにはおせんべいが並んでいる。話を聞かせてくれたのは伊いとうしげこ藤茂子さん(50代)と、娘の綾あやこ子さん(20代)。泉屋さんでこのおせんべいを焼くようになってから70年が経つそうで、現在は三代目、家族でお店を営んでいる。◇泉屋さんのおせんべいの特徴はそのかたさと、生地に山椒を入れるところ。看板に書いてある文字からもわかるように厚さにこだわりがある。「ふつう、おせんべいって一回焼いておしまいなんですけど、それを三回繰り返してものすごくかたいおせんべいをつくっているんです」。タネ(おせんべいの生地)を焼いて、そのうえにまたタネを重ねて焼く。確かに噛み砕いたおせんべいの側面を見てみると白と茶色の層にな昔ながらの 味をまもる

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