フィールドノート69号
8/48

FIELD.NOTE8雪吊つりは、気づいたらなくなっている。ぱっと雨傘のように広がり、冬の寒空を彩った雪吊りは、毎年いつとも知らぬ間になくなっていた││庭木が武装しているようにも見える、雪吊り。じっさい、冬に備えた装いだ。冬寒く雪の積もるところで、アカマツなど、庭木を守るために取りつけられる。庭木の周りを覆った縄が、枝に雪を積もりにくくし、積もったとしても折れにくいように支えているのだ。雪吊りに使う材料はわ・・らやシュロ、タケなど、ほとんどが植物。樹高にあった長さの柱を木全体の中央に立て、そこから下げたわ・・ら縄で枝を支える。近ごろでは積雪地域でも取りつけるところが減っているいっぽう、雪が降りそうになくても、冬の風物詩だからと毎年庭に取りつけるところもある。雪吊りの個性はてっぺんに一番よくあらわれている。「飾り結び」と呼んでわら縄をクルクルと巻きつけるところもあるけれど、都留や大月ではわ・・らでつくった笠、「わらボッチ」をつける。仕上げにくくりつけた黒のシュ冬のなごり春のはじまり冬のなごり春のはじまり

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る