FN70号
10/48

都留の湧水小紀行都留市は、湧水がある水資源豊かなまちです。とくに十日市場を訪れると、家のあいだを縦横無尽に流れる用水路の存在と、その水の透き通り具合には驚かされます。暑い夏、涼やかな雰囲気漂う十日市場へと足を運び、用水路や湧水といった水辺を散策してきました。そこで出会った水辺の生きものや、水がつむぎだす暮らしを紹介します。偶然見つけたカワトンボ。オスのハネは、橙色と透明にわかれる。メスのハネは透明のみ永寿院でみられる十日市場 夏なつがり狩湧水群のひとつ。湧水を求めて、東京からも観光客がやってくる。写真はすべて7月22日に撮影 「あっ、トンボ!」永寿院の湧水のそばに腰をおろしているときだった。ゆらりと視界に入ってきた姿はまさにトンボで、胸が高鳴る。どのタイミングで見られるか分からない生きものとの遭遇は、思った以上に嬉しいものだ。葉に止まったところを見届けてから、ゆっくり忍び足で近寄りカメラを構える。すると、ハネが非常に鮮やかな橙色をしていることに気づいた。よく見ると身体は淡い水色をしていた。まさに水辺にぴったりな色をしたトンボである。図鑑で調べると、「カワトンボ」と紹介されていた。        ◇         十日市場にある水源山永寿院。住職の水みずにわ庭浩ひろみち道さん(86)によると、水が湧き出る土地を見つけた弘法大師が、延暦19年(西暦800年)に起きた富士山噴火の犠牲者を弔ってこの寺院を建てたそうだ。永寿院の湧水は、「平成の名水百選」にも選ばれているほど。「この水を使わないともったいない」の精神から、市の水道水と併用して、FIELD.NOTE10

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る