FN70号
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13特集:涼むを醸し出している。 しばらく滝の周りをふらふらしていると、川に入って釣りをしている二人の男性に出会った。地元のかたらしい。釣れますかと私が聞くと、お二人は今日の成果を見せてくれた。イワナとニジマスだ。釣った魚をくれるというので、いただいて帰路についた。 水の流れを見て、音を聞くとそれだけでなんだか涼しい気分になる。周りに緑があれば爽やかな気分になる。一人で滝に行ってみたら、大勢で遊びに行くときよりも自然を感じたり考え事をしたりしながら、いろいろなことに気がつき、意外にもゆったりと流れる時間を楽しめたことに驚いた。思わぬ出会いもあって、たまにはこういうのも悪くない。でもやっぱりサークルの仲間たちと遊びに行くのもいい。水をかけあってはしゃいだり、先にびしょびしょになった先輩に水のなかに引きずり込まれたり。一人だと水に入ろうとすら思わないし、滝から飛び込もうなんて絶対に考えない。滝の上から下をのぞきこんでその高さやドキドキする気持ちを共感できるからこそ楽しいと思えるのだ。 流れる水や苔の生えた大きな岩、周りの木々を見ながら、なんだか久しぶりに自然のなかに来たなと思った。こどものころは自然のなかにいることが多かった気がする。滝や森のような、人の生活の時間とは切り離された空間のなかに足を運ぶ機会も今より多かったし、何より遊び道具がなくても生きものを追いかけて観察したり、木登りをしたり、砂や石で遊んだりした。遊びを通して自然という空間によく足を踏み入れていた。今はどうだろう。滝や森のような自然に接することはもちろん、道端に生える花や木といった身近な自然にも接することがなくなってしまったと思う。滝に行ってみて自然との距離がいつの間にか遠くなっていたことをしみじみと感じた。自然はこちらから近寄ろうとしなければ関わりのない空間になってしまう。今年の夏は自然を意識しながら過ごしてみるのもいいかもしれない。藤森美紀(社会学科3年)=文・写真

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