FN70号
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21羽化してすぐのアブラゼミアルマンモモアカアナバチの巣ソローは『ウォールデン 森の生活』で、池の水温の変化を例に「一日は一年の縮図です。夜は冬、朝は春、昼は夏、そして夕方は秋です」(第一七章 「春」)と書き、小さな世界に大きな全体を見るという観察の一例を展開しています。私はこの表現がとても気に入っているわけですが、自然観察をおこなうさいに重要な視点でもあると感じています。 一日のなかでも気温や日照条件は大きな変化があり、生きものが活発に活動をする時間帯はそれぞれの種類によって決まっています。夏の散歩のたのしみのひとつは、昆虫を観察することでしょう。たとえばヒグラシの声を聞いたり、その透明の翅を見たいと望むのなら、晴れた日には午後遅くに山に行く必要があります。また、春から夏の終わりにかけて、山にはいろいろな花が咲きますが、そこに来るチョウやカミキリムシの仲間などの昆虫を見るには、昼前から出掛けるのがいいでしょう。 昆虫が生きている小さな世界の時間から、彼らの暮らしを考えたとき、私たちが目にする事象はどういう意味を持つのでしょうか?それは多くの場合、偶然であり、予想のできない出会いであることが少なくありません。 ある日、物置の上に置いてあった竹の穴にコケが詰め込まれていました。竹や木の穴にコケを詰めて巣を作るのは、アルマンモモアカアナバチです。ハチの姿を確認できなくても、それとわかる痕跡に気づけば出会えます。またある日の夕方、羽化中のアブラゼミを見つけ、その場面に立ち会いました。これらは決して珍しいものではありませんが、普段の生活ではあまり目にしない事柄です。自分の日常のなかで起こる出来事であるからこそ、その不思議さに見入るわけです。それは、彼らが近くに生きていることを知る嬉しさとも言えるでしょう。 ある事象に立ち会い、見届けることは、そのものと深く関わることでもあります。おそらく、そこに長い時間は必要ではなく、大きな全体を捉える視点で見ることが大切になってきます。そのために日々、広く、遠く歩き、さまざまなものを観察していきたいと考えています。
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