FN70号
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FIELD.NOTE22身の丈にあった技で自然と接する●文・写真 北垣憲二(本誌発行人) 7月27日、水田で水見をする清水貞ていいち一さん(88)にお会いしました。近ごろはスズメやトンボの姿をあまり見かけなくなったと貞一さんは言います。2009年などは米の収穫前に防鳥ネットがいらなかったそうです。そういえば今年の春はチョウがずいぶん減ったという話も大学内で聞きましたが、この夏はどうでしょうか。         ◇ 貞一さんとお話をしているうちに、水田のようすがこれまでと違うことに気づきました。十日市場では豊富な湧き水で稲作をしています。湧き水は稲作をするには水温が低いため、このあたりでは水田の畦に沿うように水路をつくります。湧き水は水路を通るうちに温かくなるというわけです。今年は貞一さんの水田にこの水路がありません。 長年、稲作をやってきて土地の保水力が高くなってきたそうです(貞一さんは「水持ちがよくなった」と表現していました)。水田に取り入れる水量を少なくしても干上がることはなく水温も高く維持できるはず。そのように考えて今年は水路なしで稲を育ててみることにしたそうです。この決断は長年の経験尾崎山に残る馬うまみち道の跡(左側の窪地)。右の林道は現在、遊歩道となっている(2011年7月27日撮影)

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