FN70号
32/48

FIELD.NOTE32軽快な声が聞こえてくる日本語のラジオから、トルコの「ネイ」という笛の音色に変わります。抑揚が効いていて、ゆったりとした、そしてどこか涼しげな音色です。「日本でいう尺八のようなもの」と説明してくれるのは、ジェンギズ・ディクドゥムシュさん(45)。トルコの首都アンカラで生まれ育ち、今はここ上野原市棡ゆずりはら原に建てた工房で陶芸家として暮らしています。 ジェンギズさんのつくる湯呑みやお皿は、はっきりとした水色を表に出したものが多い印象です。「トルコでは空色をつかうことが多い文化ですから」と話すジェンギズさんは、日本で好まれる色と、トルコで好まれる色をユニークな視点でこう説明します。「日本の色は、抑えの効いた、でもよく見ると飽きない色で、もやのかかった森のなかに合うような色。トルコでは色がはっきりしないとケチったかと思われる。向こうは太陽がまぶしいので。花はカーネーションとかバラとか、作物だと東のほうはスイカ、地中海のほうはオレンジ、内陸ではリンゴなど、はっ小道の隅に付けられた小さな看板。良く見ると、手書きで「ジェンギズ窯」と控えめに書いてあります。あるときは看板の横に「セール」と貼ってあることも。なんだか面白そうです。看板が指し示す先は、車一台がようやく通れる細い道。人里離れた場所で暮らす、ジェンギズさんの工房を思いきって訪ねてみました。ジェンギズ窯を訪ねて狩野慶(ゆずりはら少年自然の里)=文・写真

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る