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H・D・ソローが『ウォールデン 森の生活』(今泉吉晴訳、小学館)で示唆した散歩のほんとうの意味とは何か。散歩をとおして見えてくるものとは。私たちは歩くことで、変貌する自然やまちの今を記録し、フィールド・ミュージアムのたのしみを報告していきます。●文・写真 西教生(本学非常勤講師)ヒヨドリの大切な仕事第15回秋の山にはいろんな木の実がなっています。実の色はさまざまで、色とりどりの紅葉も私たちの目を楽しませてくれます。これらは自然の色彩の複雑さ、精巧さを考えるきっかけになるのですが、いくつかの木の実を見ていくと、赤いものと黒っぽいものに大別できそうです。ガマズミやアオキは赤色、クロモジやイボタノキは黒色というように。さらに、このような実は鳥類が丸飲みできる大きさです。鳥には歯がないため、食物を丸飲みします。今回は、鳥類と樹木の見事な関係を見てみましょう。 キャンパスを歩くと、周辺に親木がないのにアオキやガマズミ、イヌツゲなどの稚ちじゅ樹(子どもの木)の見つかる場所があります。おそらくこれは、鳥に食べられた種子がフンとして落とされ、発芽したものです。 私たちの周りに暮らしている鳥類の多くは、食べた実をほとんど消化せずに排泄します。親木の下に落ちた実は、光の条件などの影響で大きく育つことは難しいでしょう。しかし、鳥に食べられることで親木から離れた場所に運ばれると、定着できる可能性が高くなります。木は果肉の部分を鳥類に提供して、ナツグミの枝に止まったヒヨドリFIELD.NOTE14

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