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知り合いの大工さんにつくってもらった特製の脱粒機。採れたものは唐とうみ箕で選別した後、さらに水で洗う。いいエゴマは油分が多く水に浮く脱粒後、広げて除虫。水で洗った後さらに充分に天日干し。食べてみてできあがりを判断する。よく干すことで香りとおいしさが増す庭に面したエゴマ畑(右)。刈り取りの見極めはいつもハラハラだ。遅すぎると種が落ちてしまうし早すぎてもいけない。おおかた茶色くなったら脱粒のころエゴマのある暮らし10月、春から育ててきたエゴマがいよいよ収穫のころを迎えた。収穫はどのようにすればいいのか。食べかたも気になる。エゴマの種をわけていただいた、都留市鹿ししどめ留にお住まいの志しむらひさえ村久恵さん(54)にお話をうかがった。 10月末、エゴマの刈り取りをおこなった。エゴマの茂みに近寄ると、それだけでなんともいえないかぐわしさに包まれる。食欲をそそる、どこかあまやかでスパイシーな香り。花のあとの茶色い殻を下からのぞくと、やわらかな毛の向こうに白っぽい粒が今にもこぼれ落ちそうにのぞいているのが見える。慎重に摘み取っていく。  久恵さんは、昨年一人でエゴマを育てて(今年の5倍くらい広い畑で)、あれだけ忙しくて大変だったのに病気にならなかったのは、エゴマの香りのおかげかもしれない、と言っていた。夏、疲れると、エゴマの茂みのなかに入って休む。そこは涼しくてよい香りがして、別世界だったそうだ。 久恵さんが今育てているエゴマは、お父さんから引き継いだものだ。さかのぼれば、おばあちゃん、ひいおばあちゃん、さらにはその先のご先祖様から、代々受け継がれてきた種だ。 久恵さんが子どものころ、エゴマはお客様が来たときのおもてなしのときにしか食べられない、特別なものだったそうだ。なにしろ収穫に手間がかかるので、ほんの少ししかつくれない。お父さんはそれを一升瓶に入れて保存していて、おばあ

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