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FIELD.NOTE22「服とおなじで、一着だけじゃその服の持ち味が出ないじゃん。なにかと組み合わせることで初めて服の魅力が発揮される。額縁とかもそれとおなじ感じかな」そうおっしゃる原さんの表情はどこか真剣だ。「この絵に合った額縁がほしい」という注文があれば、まずはその絵とじっくり向き合い、どういう額縁にしたら絵も額縁も引き立つのかを考える。「つねにハードルは自分自身」と考えている原さんは、依頼された相手の要望を聞きつつも、最後に自分が納得いく形になるまでつくりあげる。そうして初めて作品の「コーディネート」が完成する。自由な発想 同日、都留市大おおはた幡の原さんのご自宅兼アトリエの「閑かんげつどう月洞」にうかがった。作業場にはつくりかけの額縁や描きかけの絵、木端や小道具などがたくさん置かれていて、秘密基地のようだ。作業場の隅に段ボールがあり、いくつかの枝がまとまって入っていた。原さん原健吾さん プロフィール1959年生まれ。長崎県出身。本学の卒業生でもある。80年に初の個展をおこなう。現在、都留市・三つ峠山麓にて油絵を描くかたわら、オブジェ・額縁の制作もしている。子どもたちのための出張アート教室も展開中。はそのなかから一本の枝を取りだして「これを泳がせたいんだよね」と枝を左右に動かしながら呟く。作品として、魚のように泳がすことができないかを考えているという。陸にある枝を水中にもっていくという発想がおもしろい。「(心がけていることは)自分を飽きさせないこと。飽きっぽいから、おなじものを30個つくれっていわれたら、できないって言っちゃうと思うのね。それから、タブー(禁止事項)をつくらない。自分でここまでって天井をつくっちゃうと、結局は型通りにしなくちゃいけないから、おもしろくないよね」最近の原さんは絵を描くときにキャンバスで描かずに、板に描くことが多いらしい。「キャンバスだと四角い形が多いけど、板だったら絵に合わせてすぐ形を変えることもできる」という原さんの考えは、絵画といえば四角い形というイメージが強かった私にとって、とても衝撃的だった。 原さんにとっての「つくる」は漢字で表すなら「創る」と書く。新しいものをつくりだす「創造」の「創」。だから型にとらわれすぎない原さんの作品はどれも斬新だ。 材を取ることから始まる作品は、「材をどうとらえるか」から「つくる」が始まっている。たとえば、ドングリを拾ってよく観察してみる。ドングリを一つ取っただけでもコマになったり、顔になったり……視点をちょっと変えるだけで発想はどこまでも広がり、いろいろなものをつくることができる。そう思うと、「つくる」ことがますます楽しくなって、何でもつくれそうな気がするのだ。作品を見つめる原さん原さんはこの枝を「泳がせたい」FIELD.NOTE22

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