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33ぼや畑作業を経験しながら、「のんびりやっていければいいかも」と、林業の世界に足を踏み入れた本音を語る。地域に立ち返る視点組織が一新されたあとの、森林組合の活動は目覚ましい。たとえば、旅行会社と提携して、都留市金井にある桂けいりんじ林寺周辺の里山を整備し、観光客を招きいれたり、戸沢の裏山にドッグランや遊歩道を設けたりした。また、地元の子どもとの関わりも育んでいる。小学生がムササビの巣箱を山に設置する活動に協力したほか、荒廃した里山を開拓し、保育園児が山で遊べる空間づくりを手がけた。 「里山や地域に貢献できたらいいなと思ってやったんですよね」と、事業づくりの動機を語る小林さん。静岡県長ながいずみちょう泉町の出身である小林さんは、大月市に越してきた際、過疎化や高齢化の実情を目の当たりにし、子どもの将来が不安になったという。将来を見据えて、林業の分野から地域を明るくしていきたいとの思いは、同じ地域に暮らす一人として心強い。「地域を盛り上げながら、林業を再生させていきながら、林業を日のあたる産業にしたい」。外からやってきた小林さんだからこそ、人一倍、地域に貢献したいとの思いをもてるのだろうと感じた。 また、こうした取り組みを後押しするのが、杉すぎもと本光みつお男組合長(75)である。「やろうと言ったことに関して、いいね、やろうと言ってくれる。それがこの森林組合の良さ」。職員の意思を尊重し、どっしりと構えている組合長がいるからこそ、森林組合は再生へと舵を切っていけたのだろう。見えない林業「ふつうの業界に持ち上げたいというのが僕の願いですね。(そうすれば)いろんな人と出会えるし、いろんな民間事業体も出てきますし、森林組合もいろんな独自カラーが出てくると思うんですよね」。小林さんが言うふつうとは、昔ながらの体質に引っ張られず、長期的な経営視点に立ち、若い人でも参入できる仕事へと改変したいという意味だ。私は、山がどれほど大切で、どのような関わり方があるのか分からなかった。小林さんも「林業は見えないことが一番よくない」と指摘する。農業は一年単位で成果が見えるが、林業の場合は、苗木を植えてから搬出するのに約50年かかる。そのうえ、山との関わりが少ない人は、山の仕事を見ることが難しい。これが林業の問題であり、課題でもあるという。「僕も林業の空気を出しているつもりはないんです。ふつうだって空気を出していきたい」と、ごくごくふつうの仕事をする人として見て欲しいという小林さん。誰にとってもオープンな仕事。その礎を創ろうと奮闘する小林さんの姿が、非常に頼もしく感じた。小林さんの話を聞いて、林業は、地域と自然とが一体の仕事だと考えるきっかけとなった。自然を相手に仕事をすることは、きっと長い年月を要することだと思う。それでも、地域のため、人のため、さまざまな知恵をこらしながら、都留であらたな林業を模索している小林さん。林業が私たちの身近な現場であると感じる日もそう遠くないだろう。        﨑田史浩(社会学科3年)=文・写真次回は、森林組合がとりくむ細野山の集約化事業や、農と林を結ぶあらたな事業の試みをお伝えします。次回 後編 都留の林業に迫る 細野山を望む(2011.12.4)細野山の林道(2011.12.4)事務所のなか(2011.12.4)

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